『パニッシャー』50点(100点満点中)
社会道徳上、じつに不健全な“新・制裁者”誕生編
アメコミ原作のアクション復讐劇。同名のコミックは、89年にドルフ・ラングレン主演で一度映画化されているが、それとは別キャスト別ストーリーの新規作品となる。
裏社会の顔役(ジョン・トラボルタ)の息子が麻薬取引中、FBIによって射殺された。怒り狂った顔役は事件を徹底的に調査、潜入捜査官(トーマス・ジェーン)の存在を突き止めると、その家族を皆殺しにする。
で、次はその捜査官が怒り狂ってマフィアに復讐するというわけである。黒ヤギさん白ヤギさんのおてがみの歌よろしく、終わりのない復讐連鎖というヤツだ。
そんな不健全なストーリーなので、漫画が原作といってもお気楽な内容ではない。日本で言う「必殺仕事人」シリーズのようなものと思ってもらえば間違いない。『パニッシャー』はその「仕事人」誕生編といった内容だ。
彼の復讐がこれまた実にやりすぎ。観客がどっ引くほどの残酷かつ行きすぎな内容で、むしろ爆笑を誘うほどだ。これはまさに“制裁”の名にふさわしい。この手のアメリカ産エンタテイメント作品にしては直接的な暴力描写が目立つ作品なので、お子様には見せないようにしよう。
もともとパニッシャーの主人公は、『スパイダーマン』の原作に出てきた脇役キャラクターの一人で、本作はそれを主役にして作り上げたスピンオフ作品にあたる。とはいえ、そんな背景を知っている必要はまったくない。この映画からみても100%楽しめるようにチューンして作ってあるあたりは、『バットマン』のスピンオフである『キャットウーマン』とまったく同じだ。ちなみに『パニッシャー』は、すでにパート2の製作が決定している。
『パニッシャー』の魅力のひとつは、生身の主人公が巨大な敵と戦う必要上、装備する強力な武装品の数々だ。戦闘用の弓からカスタムガン、ナイフ、ショットガンetc... 見た目の派手さにはガンマニアならずとも大満足だろう。重武装すぎて主人公自身、それらすべてを使いきっていない点は笑えるが。
のんきなアパートの隣人たちとの心温まる交流があったり、まったく無害な拷問シーンがあったりなど、主人公がとってもいいヤツなのでなんだか救われる。ストーリーはありがちだが、それでもあのヒジョーに不健全な復讐シーンは皆さんに見てほしい気がする。