『80デイズ』60点(100点満点中)

大スターのゲスト出演もあるアドベンチャー

SF作家ジュール・ヴェルヌの「80日間世界一周」の映画化作品。数々の大スターをゲスト的に出演させる豪華なつくりは56年の映画『80日間世界一周』と同じ。だが、原作を多少アレンジした設定、内容になっている。

舞台は19世紀のロンドン、まだ飛行機もない時代。発明家のフォッグ(スティーブ・クーガン)は、王立アカデミーにおいて仲の悪い科学大臣と言い争い、思わず「80日間もあれば世界一周できる」と口走ってしまう。やがて彼は使用人(ジャッキー・チェン)を引きつれ、自らの進退を賭けて挑戦する羽目になるが……。

120億円をつぎ込んで作られた、全世代向けのアドベンチャー大作だ。物語はよく知られた原作をもとにテンポよくアレンジされたもので、カップルからファミリーまで安心して楽しめるというもの。

ジャッキー・チェンが準主役という事で、いつもの肉弾アクションも見ることができる……が、あくまでそれは作品のスパイスといった程度であり、それを見せるための映画というわけではない。ストーリーやコメディチックな主人公とのやり取り、途中で出会う気の強い女の子とフォッグ氏のロマンスなどが主な見所となる。

そしてもうひとつの見所は、数々のゲスト出演者だ。アーノルド・シュワルツェネッガーがたくましい上半身を披露する場面があったり、サモ・ハン・キンポーが久しぶりに画面に登場、ジャッキーとの懐かしいクンフー競演があったりといった、ファンが喜ぶ仕掛けがいくつも用意されている。

この映画は世界一周のお話だが、実際に10カ国へロケを行ったそうだ。すべて実際にその地で撮影したというわけではないが、CGは最小限に押さえ、セットに力を入れたという画面からは独特のレトロな雰囲気が漂いほのぼのとする。

120億円つぎこんだ超大作と思うとちょっと物足りないが、気軽なアドベンチャーコメディとして見ればそれなりに楽しめる。驚きや意外性、深い感動といったようなものはない、しょせんは予定調和の世界だが、あまり多くを期待せずにいくと、案外よかったね、と思える一本だ。



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