『血と骨』65点(100点満点中)

暴力シーンのつくりが雑で痛みを感じにくい

在日文学作家の梁石日(ヤン・ソギル)が、父親をモデルにした主人公の壮絶な人生を描いたベストセラーを、ビートたけし、鈴木京香競演で映画化した作品。

戦後の激動の時代、大阪にやってきた朝鮮人の金俊平(ビートたけし)は、混乱に乗じた強引なやり方で蒲鉾工場を開業した。強暴な性格で極道にも一目置かれる彼は、妻(鈴木京香)をレイプ同然に抱くなど傍若無人に振舞っていた。そんなある日、息子を名乗る男(オダギリジョー)が彼を訪ねてくる。

暴力的で勝手気ままな主人公を追うことで、昭和という時代の一面を描いた作品。セットや役者たちの演技も含めて、なかなかよく雰囲気を出している一本だ。在日の登場人物たちを描いた映画だからセリフは韓国語?混じりで、独特の文化描写も見られる。長い映画だが案外退屈はしない。

鈴木京香へのレイプシーン(ヌード無し)からはじまる事でわかるように、主人公の男はとても狂暴な男。愛人を囲い、工場もどんどん発展させ、怖いもの無しの快進撃を続けていくが、やがて老境に差し掛かるとその運命は無残に転がり落ちて行く。

正直なところ、ビートたけし演じる主人公の暴力性についての描写が物足りない。冒頭のレイプシーンもぬるくて、たいして強烈な印象を残せぬうちに放浪息子のオダギリジョーが現れ、主人公を軽くあしらってしまうので、こちらは主人公に対してなんだか気の毒な老人といった印象を最初から持ってしまう。

まあ実際、映画も終盤では「男の暴力は極端な不器用さからくるものだ」という方向へ進んでいくわけなのであるが、もっと前半で男を狂暴に描いておけば、老いゆく男の悲劇性が浮かび上がってきたはずだ。

これは脚本上の問題というわけではなく、目に見える場面演出がよくない。たとえば金俊平が棒を持って回りの人間を殴る場面があるが、殴るたびにその棒がゴムのようにフニャフニャするのが見える。それにボカスカ効果音がついていて、演じるのがビートたけしとなると、何をかいわんやである。私は暴力シーンが出るたびに、まるでコントを見ているようで苦笑してしまった。

その他の見所?としては、モダンチョキチョキズ濱田マリの、ヌード含む熱演といったところか。意表を突く立派なバストに驚く。

梁石日による原作を読む時間がなかったため、それとの比較ができなくて申し訳ないが、映画単体として見ると、戦後昭和の朝鮮人ドラマを見たい方の期待には、そこそこ応えることができるだろうといった印象だ。



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