『キャットウーマン』70点(100点満点中)
猫の恩返し
ナイスバディ女優ハル・ベリーが、露出の多いボンデージファッションで活躍するアクション映画。
ヒロインの化粧品会社広告デザイナー(ハル・ベリー)は、芸術的才能があるくせに仕事でそれを生かせない、引っ込み思案の地味な女性。ある日、偶然にも社内の重大機密を知ってしまった彼女は、口封じのため殺されてしまう。ところがそのとき、謎めいた猫に命を吹きこまれ、彼女はクールで気まぐれな性格と卓越した身体能力を持った“キャットウーマン”として生まれ変わる。
『キャットウーマン』はもともと『バットマン』シリーズに登場するサブキャラクターを主人公にした、いわゆるスピンオフと呼ばれるタイプの映画だ。人気女優のハル・ベリーをヒロインにしてうまいこと一大シリーズに育て、大商いをできれば……という戦略だ。ビッグバジェットの期待作だったが、残念ながら本国アメリカでは商業的にうまくいかなかった。ちなみに宣伝側が「バットマン」のバの字も出していないことからわかるように、『バットマン』シリーズの知識ゼロの方でもまったく問題なく見る事ができる。
本作は、キャットウーマン「誕生編」と言うべき内容なので、主人公の内面について比較的深く描かれている。「地味な女がカッコいい女に変身する」というテーマはいかにも女性映画っぽいし、敵役はシャロン・ストーン(「氷の微笑」主演)という、言ってみれば“女”ばかりのお話だ。おまけに『キャットウーマン』には、女性からの人気が高いハル・ベリーのアイドル映画という側面があるから、この手のアメコミ映画としてはかなり女性向きといえそうだ。
映画の前半と後半では、ハル・ベリーがダサ目の女の子からクールビューティへ一気に変貌するが、まるっきり別人のよう。髪型やメーク、ファッション、そして表情……これだけの変身ぶりを見せられると、つくづく美人てのはすごいと思う今日この頃だ。アクションシーンはフルアニメの場面も多く、ハル・ベリー自身もしょせんは普通の女優さんだからさほど特筆すべきものはないが、逆立ちして戦う格闘技カポエラをハイヒールで演じているのはなかなか新鮮だ。
この映画のハルちゃんは、お刺身を大喜びで食べるなどの数々の猫演技が可愛らしいし、文字通りのキャットウォークなどはとってもカッコいい。SM風のセクシーなレザーファッションに身を包み、ご自慢のおムネの谷間もたくさん披露していらっしゃるが、監督氏もその辺はよくわかっているようで、ファンサービスと思しきお尻のアップなんかが適度に挿入される。また、ムチをビシビシ打つ姿が実にハマっているが、本人もこのシーンはお気に入りとの事だ。
S・ストーンの自虐的ネタ等、お笑い面でも楽しめるし、カップルがデートに見る映画としてはぴったり。あるいはこの映画に出てくる女の人はちょっと怖いから、ムチでたたかれるご趣味の方にも良いだろう。この手のお気楽映画が許せない映画マニアな方にとってはどうしようもない作品であろうが、こんなファストフード的な映画をポップコーン片手に観る楽しみってのも、案外重要だと私は思っている。