『シークレット・ウィンドウ』40点(100点満点中)
主演のジョニー・デップが一人で支えている
ホラー小説界の帝王、スティーブン・キングの原作を、ジョニー・デップ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』の海賊ジャック役など)主演で映画化したサイコ・スリラー。人気作家が不気味なストーカーに追い詰められる姿を描く。
妻と別居中の人気作家(J・デップ)は、人里はなれた湖畔の別荘でひとり暮らしている。ある日、スランプに陥った彼を正体不明の男が尋ねてくる。その男は「おまえの小説は俺の盗作だ」と言い放ち、つきまとうようになる。
開演直前に駆け込んだため、この映画は事前にパンフレットなど読む間もなく見た。見ながら「なんだかどこかで聞いたような話だなぁ」と思っていたら、大昔に読んだ原作の映画化だった。(本作はS・キングの小説『ランゴリアーズ』に所収された中篇『秘密の窓、秘密の庭』を長編映画化したものだ)
とはいえ、それを差っぴいても『シークレット・ウィンドウ』は先が読みやすいストーリーだ。あまりにわかりやすいので、「これはミスディレクションで、きっと最後に大どんでん返しがあるはずだ」とすら思ってしまうほどだ。これはミステリとしては大きな痛手。
とはいえ、途中の面白さはそこそこにある。気味の悪い男に覚えのない盗作疑惑をかけられ、それを必死に晴らそうとするも、ことごとく上手くいかない展開を見ていると、歯がゆくなったり腹が立ったりする。監督さんらに上手いこと楽しませて頂いているといったところか。ラストに重きを置くという人にはすすめないが、決して全てがつまらない作品ではない。
原作と結末を変更したことが話題になっているが、先ほどもいったようにこの話、原作も映画も結末はさほど印象には残らないものだ。映画版はキング色が多少薄れたが、それでもこの手の話ならこの結末しかないだろうといった程度のもの。驚きはない。
正直なところ、主役がジョニー・デップであるという事以外、『シークレット・ウィンドウ』には印象に残る魅力がない。ズタボロな状態の作家をこ汚い扮装で演じる彼の存在は大きく、ほとんど出ずっぱりで観客に魅力を振り撒く。あなたが彼のファンなら、決して見て損はないと言っておこう。