『ハッスル!』25点(100点満点中)
チリ人妻アニータの映画デビューは見事にボカシ入り
青森県住宅供給公社の巨額横領事件で、千田郁司受刑者が10億円以上ともいえる大金をチリ人の妻に貢いでいたのは記憶に新しいが、その妻ことアニータ・アルバラードが本国で映画出演デビューしたという触れ込みのエロティック・サスペンス。
弟とともに田舎町から首都サンチアゴにやって来たシルビオは、17歳の弟の筆おろしのためにストリップバーで娼婦(アニータ・アルバラード)をあてがってやる。そのバーでマフィアのボスに認められた兄はやがて組織をのし上がっていくが、兄弟揃ってボスの女に惹かれてしまったがめに、3人の運命は狂って行く。
エロシーン満載のB級ポルノかと思っていたが、チリ本国での評価は、アカデミー賞外国語映画賞など、いくつかの国際的な映画祭に出品された事からもわかるとおり、案外真面目な作品らしい。
若い兄弟とボスの女、この3者の視点で同じドラマが3度繰り返され、徐々に真実が明らかになっていく凝った構成を見ると、確かに何がしかの熱い思いを持って作られた映画であるといったことはわかる。純粋にチリ発の映画というのは珍しく、日本からもっとも遠い国の実情や生活風景、とくに日本文化がチラホラ劇中にも見えるというもの珍しさは確かにある。
……が、結局映画『ハッスル!』の話題はただひとつ、チリ人妻(ちりじんつま)アニータの出演という一点に尽きるだろう。それがなければこの映画が日本で公開されることはまず無かったはずである。しかし彼女の出演シーンはほんの2箇所程度。台詞はまあ、一言はあった。チリでも抜群の知名度を誇る彼女だけに、ちゃんと役名まで用意されているが、まごうかたなきチョイ役だ。
ではいったい『ハッスル!』でアニータは何をしているのか? わかりやすく説明すると、17歳童貞君の股間に顔をうずめて顎関節による上下反復運動を行っているといったところだ。詳しいことはファンタジックな画面の乱れ(別名ボカシ)により、残念ながら日本では見ることができない。……が、グラマラスなその醜態、いや肢体をあらわにしてダイナミックに動いているさまは、チョイ役とは思えぬ迫力がある。そのため劇中の童貞クン17さいは、どうやら突発的EDになってしまったようだが、心より同情する次第である。
何にせよ、この方がこんな風にして日本人の血税を10億円も巻き上げたのかと思うと、単なる映画とはいえ、見ていて複雑な心境になる。その回収がどこまで行われたのかわからないが、とりあえず映画館にいってこのシーンが始まったら、皆さんと共にブーイングの一つもしながら、初出演を祝福してあげる程度の事はしておかねばと思う。
アニータの怪演により、影が薄くなってしまったヒロインだが、こちらは実に綺麗なお顔とプロポーションをお持ちで、おまけに何度も裸になってくださる。エロ映画ではないので大してエッチな印象はないシーンばかりだが、クリームをビキニのように胸と股間にだけ塗り、ダンスしながら徐々にそれが落ちていくという芸(?)は独創的で良かった。
ストーリーその他の要素もまあ、この映画以外であったならばいくらかは批評する気にもなるが、そんなものを求めている読者など間違いなく一人もいないと思われるので割愛する。
それにしても原題とまったく無関係なこの邦題。おまけにハッスルの「ッ」の点々がハートマーク。ま、笑ってくれというメッセージだと受け取りましたが。