『トルク』90点(100点満点中)

大爆笑、最高のバイクアクション映画

アメリカのバカ若者たちが大型バイクで暴走する様子をけれん味たっぷりに描いたアクションムービー。

主人公(マーティン・ヘンダーソン)は、恋人とやり直すためこの町に戻ってきた。ところが町のバイカーギャング(暴走族みたいなもんだ)の中ボスとトラブり、そいつに大ボス(アイス・キューブ)の弟殺しの濡れ衣を着せられてしまう。

私が『トルク』の試写を見たのは、なんと今年の1月だ。著名なスターが出ているわけでもなく、監督も新人。要するにまったく売れる要素がないということか、公開も延び延びになってはや10月である。しかし、この映画ほど私が公開を望んでいた作品もない。早く大画面といい音響でもう一度見たいと願っていた一本なのである。

『トルク』は、「スピード感のあるバイクアクションの映画」と聞いて、あなたが想像する10倍はぶっ飛んだ映画だ。かつて、ここまで滅茶苦茶をやった映画は見たことがない。さすがはミュージックビデオやCMを中心に活躍してきた監督らしく、斬新でインパクトのある映像作りが上手い。そもそもバイクチェイスだけで、これほどバラエティ、アイデアに富んだスペクタクルを作れるという事が凄い。

しかもそれらのアクションシーンは、大まじめに作られているにもかかわらず、見ていて大爆笑なのだ。考えてもみてほしい。ロスの街の大渋滞を、時速320キロで大型バイクがすりぬけていく姿を。私はこのラスト20分間、笑いが止まらず腹が痛くなった。こんなものをクソ真面目に作ってしまうアメリカ人のセンス、最高ではないか。劇中でものすごいライディングテクニックをみせつけた主人公は表情ひとつ変えず、クールにいう。「人間、やればできるもんだ」 できるわけないだろ!

『トルク』は、そんな風に観客を楽しませてくれる愛すべき映画だ。アクションでここまで笑わせてくれる映画なんぞ、そうそうない。

また、車好き、バイク好きにとってこの映画はたまらない。ポルシェとハマーのクラッシュシーンなど、見ているだけでゾクゾクする。ヘリコプターのエンジンを積んだ大型バイクY2K(おいおい……)などは世界に10台しかないとされるモンスターバイクだし、そのほかにもトライアンフ、アプリリア等のカラフルな大型バイクが続々登場する。好きな方にとってはそれだけでもウットリすることだろう。バックに流れるノリのいいサウンドもピッタリだ。

最初から最後まで定期的にこれらの車種によるカーチェイス、バイクチェイスが挿入されるが、この監督の心憎いところは、本当に凄いものは最後までしっかりと出し惜しみ、温存しているところだ。つまり、えらく派手にみせているようで、途中では力をセーブしている。観客が息切れしないよう、うまいこと計算してアクションを配置している。だから、途中までいまいちだなぁ、なんて思っていても最後にガツンとやられてしまう。結果、非常に満足して劇場を後にできるわけだ。

ストーリーは非常にわかりやすく、あくまでアクションを見せるためのものだとわかる。こうした映画はテンポさえ悪くなければ、筋書きはバカバカしいほど良い。その点『トルク』は文句なしで合格だ。なんといってもこの映画でストーリーを批判するのは的外れもいいところ、この、非現実的なアホらしさを愛せる人にこそ向いている作品なのだ。

思いっきりガラの悪い不良たちが、予測どおりの行動をとるあたりも笑えるし、やたらと美人でスタイル抜群の敵味方の女二人がちゃんと対決するお約束の展開も楽しい。強引に感動を誘う友情物語的な展開も最高だ。

『トルク』の上映時間はたったの81分だが、こちらをこの上なく爽快な気分にさせてくれる楽しい映画だ。映画史上、何の記録にも残らない作品だろうと思うが、このサービス精神には大変好感が持てる。いかにもアメリカ映画を見たという気分にさせてくれるし、もしあなたが明るいデートを演出したいのであれば、これほど適した作品はほかにない。絶対の自信を持って私は『トルク』をオススメする。



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