『モーターサイクル・ダイアリーズ』65点(100点満点中)

普通の青春映画として見れる

キューバの革命家チェ・ゲバラの若き日の南米縦断の旅を描いたロード・ムービー。

1952年、アルゼンチンの青年医師アルベルトは、親友の医学生エルネスト・ゲバラを南米縦断の旅へ誘う。最終目的地のアマゾン・ハンセン病施設を目指し、わずかな荷物と一台の中古バイクで、二人は貧乏旅行をはじめる。

革命家がその思想に目覚めるきっかけとなった旅を、ゲバラ本人や劇中にも出てくる友人の手記等を元に映画化した作品だ。よって、ゲバラの描写は非常に好意的で、女遊びすらしない高潔な人物像として描かれている。演じるガエル・ガルシア・ベルナルも、非常に初々しい演技で、誠実な若者の姿を表現している。

若き主人公二人は、貧乏な旅の中で最下層の労働者や病人らと出会い、弱者の現実を生まれて初めて目の当たりにする。自ら数々の旅の困難を乗り越えながらも、社会の理不尽さにやりきれない思いを抱き、いつか変えてみせるという強い思いを育てるのだ。ゲバラを描いた映画ながら、このあたりの構成は普通の青春映画としても楽しむことができる。

空中遺跡マチュピチュでのロケーションシーンなど、南米各国の空気感を感じられる映像も見る価値がある。実話ということで、それほどとっぴな出来事が起こるわけでもない旅だが、クライマックスのハンセン氏病施設の前の川でゲバラがとる行動、その行為には胸を打たれる。後の歴史に残る彼を象徴するような感動的なシーンだ。

さわやかなロードムービーとしても優れているので、これを機にゲバラという人物に興味を持つ人も多いことだろう。127分と少々長めだが、さほど退屈せずに見ることができる一本だ。興味のある方はぜひどうぞ。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.