『僕はラジオ』85点(100点満点中)

知的障害の青年を巡る驚きの感動実話

アメリカのスポーツ専門誌に掲載されたある感動実話の映画化。知的障害の黒人青年を中心とした人々の交流を描いたハートウォーミングなドラマだ。

舞台は1976年のアメリカ。高校のアメリカンフットボール部の練習場をいつもうろついて眺めている知的障害を持った黒人青年がいた。ある日、ふとした事で部員が彼にイジメを加えてたことを知ったコーチは、当事者を厳しくしかった上で青年をチームに雑用係として迎えることにした。突然の事に戸惑いながらもやがて彼を受け入れていく部員たちだったが、人気チームである彼らの成績が下がるにつれ、街の人々からの風当たりは徐々に強まっていく。

時代はまだ70年代、知的障害を持つ黒人青年は、人々から気味悪がられていた。そんな彼をただ一人暖かく受け入れたコーチは、最初は周りの理解を得られなかったが、心やさしい娘や妻などの理解者の助けを得て、青年との交流を深めていく。やがては、町の人々すべても変わっていくのだ。健常者が障害者を助けるのではなく、一人の知的障害の青年が人々を救う物語であるところが感動的。

我々プレス試写に行く人たちは、すべての作品について予備知識を持っているわけではない。私もこの作品については、開演ギリギリに席についたこともあって何も知らずに鑑賞することになった。ところが、それが結果的には良かった。私はこの作品が実話を元にしたストーリーだということも、あのように衝撃的な結末であることも知らずに見たのであるが、おかげで大変に驚かされ、大きな満足を得て帰ってくることができた。多くの日本人は、映画を見る前の私と似たり寄ったりの知識しかないだろうから、あまり内容を知る前に見に行くことをすすめたい。

実話の登場人物を整理してうまく劇中のコーチに集約し、ストーリーも無理なく構成してある。非常にすっきりしているが、退屈する場面はないし、何しろ芸達者な役者で固めてあるからドラマに見ごたえがある。バックには『タイタニック』のジェームズ・ホーナーによる音楽が流れ、感情を盛り上げる。

劇中ではいくつもの心に残る台詞が交わされ、観客は「正しいことを行うことの大切さ」という真っ直ぐなテーマを改めて思い直すことになる。私も、久々に心洗われる思いがした。

こういう映画は、大好きな人と一緒にみると良いものだ。あまりにも邦題がつまらなそうで意味不明だと思うかもしれないが、気にすることはない(主人公の青年がラジオ好きなので、“ラジオ”とニックネームをつけられることからきている)。宣伝コピーもぱっとしないので、私としては高い点でプッシュして、少しでも多くの感動実話モノが好きな人に見てもらいたいと思う次第だ。



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