『アラモ』40点(100点満点中)
単純な定番テーマも飽きられつつあるか
膨大な製作費をかけて、19世紀のアメリカの伝説「アラモ砦の戦い」を描いた超大作ドラマ。
1835年のテキサス、サンアントニオ。メキシコ軍に占領されていたこの町を奪回したテキサス軍は、アラモ砦に立てこもっていた。皆からの信頼厚き義勇兵のジムは、「アラモを捨て、広い戦場で決戦せよ」との司令部命令を受けていたが、強い思い入れのあるこの砦を捨てられずにいた。やがて歴戦の勇士デイヴィ・クロケットの一団が助っ人にやってきて砦の士気は上がるものの、敵の圧倒的な大軍はすでに目前に迫っていた。
「アラモ砦の戦い」といえば、わずか200名弱のテキサス男たちが、数千の敵メキシコ軍相手に奮闘し、最後は玉砕したと言う有名な悲劇の戦いで、アメリカ人なら誰もが知っている国民的アイデンティティーともいうべき史実だ。1960年にジョン・ウェインが監督・主演で映画化したのを筆頭に、何度か映画、テレビ化されてもいる。今回はかつてない製作費を投入し、新たにいくつかの歴史上の新解釈をもりこんで映画化されたもので、なかなかの力の入りようだ。
画も音楽も派手でセットも壮大、アメリカ人に向けて作られた映画らしく話は単純、ストーリーは一本線というものだ。一言でいえば、大層な入れ物の中で単純な戦争映画をやっているといったイメージ。残酷な殺害シーンがないので、誰が見ても不快にはならない、健全かつ無難な作品である。
自由と独立のために戦い、最後は勝利をつかむ。その過程に起きた尊い犠牲……。いかにも米国でウケそうなテーマだが、さすがに飽きられたか、新『アラモ』は商売としてはあまりうまくいかなかった。
まず、ただでさえジョン・ウェインのような突出したスターが起用されていない上に、キャラクターがどれも平凡で埋没しているのがよくない。観客が容易に感情移入ができないとなると、こうしたドラマは難しい。女子供の存在が完全に添え物扱いというのも薄っぺらくていけない。
ラストで「アラモを忘れるな!」と叫んでいるのを見ると、真珠湾から911まで歴史は繰り返すと見るべきか、アメリカは同じことばかりやっていると見るべきか、どちらだかわからなくなってしまう。この題材に興味のある人ならいいが、万人向けとはいいがたい内容なので、よくご検討のほどを。