『スクール・ウォーズ HERO』30点(100点満点中)
テレビドラマの縮小再生産にすぎない
荒廃した高校で不良たちを更正させ、のちに全国優勝まで成し遂げた山口良治監督と京都市立伏見工業高校ラグビー部の実話を映画化。この物語の映像化としては、一斉を風靡した往年の傑作ドラマ『スクール★ウォーズ 泣き虫先生の7年戦争』や、TV番組の「プロジェクトX」でのドキュメントあたりが有名だが、『スクール・ウォーズ HERO』も大映ドラマ版を多分に意識したつくりになっている。ドラマ版は今でもDVDが好評ということで、根強い人気がある。
元ラグビー日本代表選手の山下(照英)は、校長に熱心に頼まれたことで、厚遇の実業団監督を蹴って荒廃しきった伏見第一工業高校に就任する。が、現実はあまりにもひどく、生徒による暴力も横行していた。真正面から生徒たちとぶつかる山下のやり方は、事なかれ主義の同僚の教師たちにも反発され、彼は孤立してしまうのだが……。
『スクール・ウォーズ HERO』は、TVドラマ版と現実の話の両要素を、中途半端にもりこんで失敗した。現実をドラマチックに脚色した大映ドラマ版の面白さと感動には到底及ばず、現実を忠実に映画化した真面目な作品とも言いがたい。
上映時間は118分だが、ストーリーは非常に駆け足。魅力的なはずの各エピソードも、十分に描ききれていない。どうせ時間的には追いきれないのだから、もっと大胆に脚色するしか手はなかったように思えるのだが。無理やり多くのエピソードをぶち込むには、映画というジャンルは無理がある。描く時間が足りないから、どれも見ていて恥ずかしい場面の連続になってしまい、場内からはちょくちょく失笑が漏れていた。
低予算とみえて、見せ場となるラグビーシーンの迫力も今一つ。リアリティは多少出ているかもしれないが、TVドラマと大して変わらないレベルだ。これではまるで、ドラマ版の縮小再生産だ。映画は連続ドラマと違って尺が圧倒的に短いのだから、よほど工夫を凝らして構成しなくては話にならない。
それなのにこの作品は、なんだかドラマ版のダイジェストを見ているようだ。これでは観客は、スクリーンを見ながら「ああ、あの場面は泣いたよなぁ」と、(大映ドラマの方を)思い出して懐かしい気分になるという、新しく作った映画としてはあまりにも情けない見られ方をすることになってしまう。照英はこの役柄にぴったりだと思うし、その他のキャストそれぞれの演技も良いのだが、この構成ではすべてがぶち壊し。ご愁傷様である。
思えば連続ドラマで放映していたころ、影響されて高校でラグビー部に入った友人が私の周りだけで5人もいた。『スクール☆ウォーズ』は、当時それほど流行ったドラマだったわけだが、何度も再放送されたから、若い人にも比較的知名度が高い。なのに、こういう駄目映画をぽーんと作ってせっかくの優良コンテンツを殺してしまう。つくづく娯楽映画作りが下手なのねぇと呆れてしまう瞬間だ。そういえば先日『デビルマン』という昔の漫画の実写映画版をみたが、これも凄絶極まりないダメ映画であった。そのうちレビューを書くことになると思うが、たぶん驚くほどの低得点を記録することになるだろう。
まあ、話はズレたが、そんなわけで『スクール・ウォーズ HERO』は、ドラマ版のファンをがっかりさせる事間違いない映画ではある。……が、ダイジェストとして見る分には2時間でいろいろと思い出せてある意味便利だ。役者の好演も空しいほどの出来ではあるが、それでも見ないと気がすまないという方がいたら、ぜひ感想を聞かせてほしいと思う。