『インファナル・アフェア 無間序曲』55点(100点満点中)

よく工夫された続編だが……

不況だった香港映画界久々のスマッシュヒットとなった前作の、物語上の時代としては過去にあたるPART2。『インファナル・アフェア』シリーズは3部作なので、近々完結編も日本で公開される。このパート2では、前作の主人公二人がそれぞれスパイになるまでの過程、若き日の様子が描かれている。ちなみに、前作を盛り上げた主演のスター二人(アンディ・ラウ&トニー・レオン)は残念ながら出てこない。

舞台は前作からさかのぼった1991年。香港マフィアのボス、クワンが暗殺された。この暗殺劇は、クワンの部下サムの妻マリーが、彼女を慕うチンピラのラウを使って勝手に行ったものだった。ラウはやがてサムの命令で警察学校へ侵入させられることになる。一方、暗殺されたクワンの私生児であると発覚した警察学校の生徒ヤンは、上司のウォン警部により、マフィア組織への潜入を命じられる。

数多い登場人物は、前作の設定をそのまま受け継いでいる。前作を見ていないとストーリーも登場人物もさっぱりだから、まずはビデオ・DVD等で予習しておきたい。

暗いトーンの映像には重厚感があり、冒頭から期待を高まらせる。すでにキャラクターの数々に感情移入がすんだファンにとっては、かなり見ごたえのあるパート2といえるだろう。

このパート2のあとに前作の物語が始まるという時代設定のため、観客はすでにある程度の結末がわかっているわけであるが、それが逆にいくつものシーンの切なさを高める効果を出している。前作の大ヒットに気をよくしたお気軽な続編かと思いきや、なかなかよく練られたストーリーだ。前作を引っ張った金看板スター二人が不在でありながら、香港ではかなり評判がよかったというのもうなづける。

そのスター二人の役を受け継いだ若手2名(エディソン・チャン&ショーン・ユー)だが、さすがに存在感の薄さは否めない。脇役陣がかなりいい味を出しているので救われているが、はたして完結編はどうなるか。

前作と同じテーマを描く続編ということで、驚きも新鮮さも大きくスポイルされているものの、この作品世界が好きな方には十分納得できる出来栄えだろう。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.