『トゥー・ブラザーズ』50点(100点満点中)

トラ好きの人がファミリーで見る作品

二頭の子トラの運命をドラマチックに描いた英仏合作の動物映画。

1920年代のカンボジア、アンコールワット。元気ものの兄とおとなしい弟の二頭のトラは、両親トラとともに元気に育っていた。ところがある日、仏像盗掘のためやってきたイギリス人一行にみつかってしまい、兄弟は別れ別れに連れ去られてしまう。

最近はやりのドキュメンタリーではなく、あくまでトラを主人公にした劇映画である。人間の都合で連れ去られ、離れ離れになりながらも、懸命に生き抜くたくましいトラの一生を描いている。人間はあくまで脇役、トラの視点がメインとなっている。はたして兄弟は感動の再会をはたせるのか?!

カンボジアのアンコール遺跡で実際にロケを行っており、現地の空気が伝わってくる。そこでトラたちはしっかりと“演技”をし、見事このストーリーを完成させた。さまざまな角度からトラの魅力を描いているが、決して婦女子の「カワイイ〜」の声にこびるような演出はしておらず、好感が持てた。動物(できれば虎)好きの人で、ドキュメントではない純粋な(?)動物映画を見たい人向けの作品だ。家族での鑑賞にも向いていよう。

基本的にトラと人との共演場面はすべて合成だが、気をつけてみていても気づかないほどの出来映え。ただ、人間側キャストの主演ガイ・ピアースの強い要望で、ラストシーンだけは実際に大人のトラと共演したというから驚く。

こうした作品のつくり自体に興味がない人にとってはどうにも退屈な110分だろうが、このレビューを読んでいいなと思った人、自分に合っていると思う方なら、少なくとも損をしたと思うことはないはず。そのくらいの質はキープしている。

こうした動物映画を見ると、撮影時の調教などの苦労を想像して、思わずご苦労さまといいたくなるものだが、『トゥー・ブラザーズ』からはそうした汗臭さはあまり感じない。実にスマートな印象を受ける。

私は愛玩動物を主人公にした映画は好んでみるタイプではないが、こういう野生動物にさえ演技指導ができるのならば、色々面白い映画が作れそうだなと想像する。とくに、これだけの事ができるこの監督には、いつか感動の兄弟ワニ映画なんぞを作ってもらいたい。その暁には、ワニ好きの私自らTVCMに出て、たくさん誉めてあげたいと思う(たぶんヒットはしません)。



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