『ヴィレッジ』30点(100点満点中)
最後のオチの驚きも、盗作騒動で興ざめ?
『シックス・センス』の映画的叙述トリックで世界を驚かせた、M・ナイト・シャマラン監督の最新作。人里はなれた小さな村を舞台にしたサスペンス劇。
深い森の中、外界から孤立して数十人が自給自足で暮らす素朴な村【ヴィレッジ】には、決して森に入ってはならないという掟があった。そこには恐ろしい何かが住むと伝えられており、“彼ら”のテリトリーに村人が立ち入らないことで、平和が保証されているというのだ。ところが、町に薬を買いに行きたいと願う主人公が森に踏み込んでしまったことで、村の運命が大きく動き始める。
テレビCMや予告編、そして発表されている上記のようなストーリー紹介をみれば、オカルト風味の恐怖映画なのかという印象を受ける方が多いだろう。しかし実際はそうではなく、男女の愛をテーマにした地味目のドラマである。少なくとも、恐怖を売り物にしたホラー系列の作品ではない。
もちろんこの監督の脚本であるから、最後にどんでん返しもあるし、途中にはそれなりにサスペンス要素もある。だが、詳しく予習せず見に行く多くの方にとっては、見る前と見た後の印象がかなり違うという点で、宣伝戦略にずるさを感じてしまう可能性がある一本といえよう。
基本的には、例によってオチでビックリさせる事が大きなウリであるといって差し支えないと思うが、過剰に驚かせようとしていない控えめな演出のため、地味な印象。また、メインテーマである恋愛のほうもあまりスッキリしない。それぞれの構成要素やアイデアは二番煎じや平凡なものであっても、見せ方の工夫で新鮮に感じさせてくれる力がある監督だけに、少々期待はずれだ。
ところで、この映画のプロットや結末が、別の作品に酷似しているという盗作疑惑のニュースが飛び交っている。児童書の『ランニング・アウト・オブ・タイム』という本に似ているそうだから、読んだ人はご注意を。
『ヴィレッジ』の脚本内容、とくに結末に関しては緘口令がしかれ、製作中も脚本は金庫に保管され、一部の関係者しか見ることができなかったという。仮にシャマラン監督が盗作をしておらず、偶然似てしまっただけにしても、アメリカでは著作権の裁判で負けると、莫大な賠償金支払い命令が出る可能性がある。
まあ、数少ない「脚本を見れた人」の中に「ランニング・アウト・オブ・タイム」の読者がいなかったのが運の尽きというやつだ。次からは金庫にしまう前にお近くのミステリマニアにでも中身を確認してもらうと良いであろう。
ところで盗作騒動よりも大きな問題は、『ヴィレッジ』は、『ランニング・アウト・オブ・タイム』や、このオチに似ている数々の過去作品を見たことがない人が見たとしても、大して面白い映画ではないという点である。