『ヴァン・ヘルシング』50点(100点満点中)

つっこみ所は多いが、VFXの力技で押し切られる132分間

『X-MEN』シリーズの主人公ウルヴァリン役で知られるヒュー・ジャックマン主演でおくる、アクションファンタジー大作。ヴァンパイア、ウルフマン、フランケンシュタインといったユニバーサル映画の誇るモンスターが総登場し、主人公の怪物ハンター、ヴァン・ヘルシングと壮絶な戦いを繰り広げる。

舞台は19世紀のヨーロッパ。世界各地で怪物狩りを行っているヴァン・ヘルシング(H・ジャックマン)は、バチカンからドラキュラ伯爵を抹殺せよとの命令を受ける。早速その居城に向かったヘルシングは、そこで数百年に渡り伯爵と戦ってきた一族最後の生き残りの王女と出会う。

「5分に1回の驚愕映像!」というコピーとTVCMから想像されるとおり、最新のVFXがあらゆるシーンに使われたファンタジー作品だ。狼男やフランケンシュタイン、ドラキュラなどの有名モンスターを総登場させ、それぞれを絡み合わせた新設定(たとえば、あるモンスターは別のモンスターの存命に深くかかわっている等)がなかなか新鮮。2時間12分という長い上映時間をかけて、じっくりとヴァン・ヘルシングの対決を描いている。

怪物映画独特の世界観を、押さえた色調やあらゆる美術を使って格調高く表現している。しかし主人公が使用する武器などは、まるで現代の最新兵器のような高機能なもので、映画的な迫力を増す事を優先している。時代考証など、こだわっているようでめちゃくちゃな所があるのだが、モンスターについての斬新な設定のこともあってか違和感はさほど感じず、統一感がある。

VFXの一部に明らかに嘘っぽい部分があったり、ストーリー上にやたらとつっこみ所が多いなど、かなり大雑把なつくりである点、そしてファンタジーというジャンルは趣味性が高く、見る人を選ぶという点でなかなか万人にはすすめがたい作品ではある。

本作でヒロインを演じるケイト・ベッキンセイルは『パールハーバー』のヒロインでブレイクした美人女優で、ひとつ前の出演作では偶然にも吸血鬼役だったのだが、今回は吸血鬼狩りの一族最後の生き残りとしてヴァン・ヘルシングとともにドラキュラと戦う。……が、ドタドタと走る姿は運動音痴の女の子そのもの。体が重そうで思わず苦笑してしまう。

まあ、細かいことを言い出すときりがない映画なので、かたいことはいわず気軽に楽しんだ方がいいだろう。画面がかなり暗め(真っ暗)だし、VFX満載の作品だから、どうせ見るなら家庭のモニターよりはスクリーンで見た方がいい。



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