『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』55点(100点満点中)

類を見ない強烈さ、本当に世界公開する気なのか?!

藤子不二雄(A)の人気漫画『忍者ハットリくん』を、SMAPの香取慎吾を主演に実写映画化した話題作。

伊賀忍者の服部カンゾウ(香取慎吾)は、父ジンゾウから最後の修行を命じられる。それは、現代の江戸(=東京)で主(あるじ)を見つけ、忍者の掟を破らずに仕えきるというものだった。さっそく江戸にむかったカンゾウは、ひょんなことから小学生の三葉ケンイチに仕えることに決める。

いやはや……なんともすごい映画を作ってしまったものである。「マジで実写でやるのか?!」と、以前から一部で話題となっていた『実写映画版・忍者ハットリくん』は、予想以上にインパクトのある、とんでもない映画であった。

映画は、森の中での忍者同士の激しい戦闘シーンから始まる。迫力十分なアクション、スタイリッシュに使われたCG、ビートの効いた音楽──正直、「……ヤベエ、カッコいいじゃん」と、この私でさえ思いかけた。

ところが、スクリーンを飛び回った青い忍者服の主人公が覆面を取ったとき、その下にはほっぺたに赤いうずまきを書いた香取慎吾の顔が……。そして彼は、ノーテンキな笑顔でこう言うのだ、「ニンニン!」

この瞬間、この映画の方向性は決まった。すべてのカッコよさをぶち壊す力のあるあの頬のうずまき、そしてニンニン。疑うものがいたら、まずは手近な鏡の前に立ってみるとよい。そして、満面の笑顔で言ってみてほしい「ニンニン!」。あなたは間違いなく、近くに家族や知り合いがいなかったことを心から感謝することであろう。

もちろん、この口癖や頬のうずまきは、アニメ版でおなじみのハットリくんのトレードマークだが、実写化するにおいて、まさかそのまま表現するとは夢にも思わなかった。しかも、ライバルの少年忍者(だったはずの)ケムマキは、あの髪型のままガレッジセールのゴリが演じている。チクワ好きの忍者犬シシマル役など、本物のイヌである。ちなみに藤子アニメの中で私が最も嫌いなヒロイン(嫌な女なんだもん)である夢子ちゃんは出ない。

そんな個性的すぎるキャラクターの中でも最大級に奇妙なルックスの主人公、ハットリくんは、新幹線のぞみよりも早く走り(おいおい……)、スパイダーマンよりも軽やかに東京の空を舞う……ニンニン言いながら。なにもかもが、たいへんカッコ悪い。

何しろ原作では少年忍者だったハットリくんもケムマキも、映画では見ての通りのいいオッサンなので、当然ストーリーは映画版完全オリジナル。「あるじ以外には姿をみられてはいけない」という掟の存在が絶妙で、数々のゆるいギャグを生み出している。とはいえ、友情の大切さをうたった物語は、一見健全な子供映画に見えなくもない。

……が、ためしに手近な小学生&中学生に聞いてみたところ、それぞれ
1 金色のガッシュベル好きの中学生A 「ハットリくん?何それ
2 NARUTO好きの小学生B 「ああ、知ってる。でもたぶんクラスで一人も見たいって言う人いないよ」

という、あまりにもさびしい反応であった。実際私も、「はたしてこの映画は、誰に見せるつもりで作ったのであろう……」という疑問が未だに解けないのである。先出の子供らの意見から推測するに、いまどきの子供たちに向けた映画でないことは明らかだ。何しろ、忍者ハットリくんを愛した世代というのは今では30代以上の大人なのである。そう考えると、やはり『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』は、我々大人が苦笑(失笑)しながら楽しむためのおバカ映画という評価が妥当なところだろう。

劇場版スレイヤーズ等の音楽で知られる服部隆之の、あまりにもカッコイイBGMに乗って、とってもカッコ悪い香取ハットリくんが大活躍。この強烈な一本を、皆さんもぜひ毒見してみようではないか。点数は今週最も高いのに、なぜかダメダメ認定という妙な結果になっているが、このページの読者の方ならきっとこの真意を読み取ってくださるであろう。

──それにしても、これを契機に藤子アニメが次々実写映画化されはじめやしないかと冷や冷やする。ドラえもんあたりを実写でやられたらと思うと、考えるだけで恐ろしい。



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