『デビルズ・バックボーン』40点(100点満点中)
ホラーというより戦争ミステリ
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル製作、ホラー界の鬼才ギレルモ・デル・卜ロ監督によるスペイン製ホラー映画。
内戦下のスペイン、人里はなれたところにある孤児院が舞台。新たに連れてこられた主人公の少年は、その地下室で成仏できない少年の幽霊と出会う。最初は恐怖におびえる彼だったが、やがて霊が自分に何かを伝えようとしていることに気づく。
最初に『ホラー映画』と書いたが、一般に想像される怨霊ものホラー映画ではない。予告編や広告イメージには、おどろおどろしい特殊メイクの幽霊の姿があったり、そもそもタイトルがいかにもそれっぽいので勘違いしてしまいがちだが、『デビルズ・バックボーン』は、戦争の悲劇を描いたシリアスな映画である。ミステリの要素も強く、ホラーという印象はあまりない。
かなりまじめに作られた復讐劇でもあり、いくつかある暴力的なシーンも、観客に痛みがはっきり伝わるだけのリアリティを持たせた演出。内戦による混乱が引き起こした悲劇が、子供たちを主人公にしていることでより強く印象に残る。幽霊だの何だのといった要素は、むしろ二の次といった扱いに感じられる。よって、映画で恐怖や驚きを味わいたいといったお客さんには向いていない作品といえるだろう。
どちらかというと、スペイン国内向けに作られた作品という印象が強く、製作者の知名度やタイトルのインパクトの割には、見てみるとまったく印象の違った地味な作品で、違った意味での驚きを得た一本だった。