『マーダー・ライド・ショー』40点(100点満点中)

ホラー映画マニア向けのとびきり悪趣味な一品

熱狂的なホラーマニアでもあるロック・アーティストのロブ・ゾンビが初めて監督したカルトホラー。自らのマニアックな趣味と情熱を注ぎ込み2000年に完成したものの、米国では配給会社にそっぽを向かれ、3年後になんとか公開にこぎつけたといういわくつきの一本。しかしながら、その間の数年間にロブ・ゾンビ人気が盛り上がったことで、わずか700万ドルの低予算映画ながら、本作は全米興行ベストテンに入るほどのヒットを記録した。

舞台はアメリカの田舎町。奇妙なスポットを取材しながら全米各地をドライブしている主人公ら4人の若い男女は、偶然立ち寄ったガソリンスタンドで「この町には誘拐した人々へ残酷な改造手術を行った異常な外科医“ドクター・サタン”の伝説がある」と聞き、早速その場所へと向かう。だが、途中で車がパンクしてしまい、近くの民家に避難することに。

殺人鬼が巣くう不気味なホラー屋敷におびき寄せられた運の悪い若者たちが、監督の悪趣味全開の残酷でお気の毒な仕打ちをひたすら受ける、B級テイスト満載のホラームービー。

自身のプロモーションビデオなどで、個性的な映像作りには定評のあるロブ・ゾンビだけに、初監督作品にしてはインパクトの強い映像を見せる。また、熱烈なホラーマニアとして、映画のタイトルや登場人物の名前、ストーリーラインやその他のディテールには、過去のホラームービーから多数のネタを拾ってきて、わかる人にはわかるようちりばめてある。

ゾンビあり、異常な殺人鬼あり、フリークスありと、様々な不気味要素がごた混ぜになっており、全体を通して非常にマニアックな印象のホラー映画だ。特に殺人鬼一家のキャラクターの“濃さ”ときたら大変なもの。あちらでは、一家のフィギュアがオタク層に大人気だそうだ。

とはいえ、この手の「監督の趣味全開映画」は、元ネタがわからなければ楽しみも半減。ただの古くて安っぽいB級ホラーにしか見えなくなってしまう。『マーダー・ライド・ショー』の場合も、その個性を楽しめる人は相当限られてくる。ごくフツーの“薄い”お客さんたちはとてもついていけないだろう。

『マーダー・ライド・ショー』は、ストーリーよりもキャラクターの奇抜さや独創的な美術、相当こだわった細部の小ネタを楽しむホラー映画だ。日本では、非常に小さなマーケットでしか受け入れられないだろうが、はまる人はどっぷりとハマってしまうというタイプの作品といえる。実際、アメリカでは早くも続編が作られているが、このPART1を凌駕するほどのディープな内容になっているだそうだ。



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