『リディック』30点(100点満点中)
ストーリーが薄っぺらい上、主人公が迫力不足
スキンヘッドにマッチョな肉体という、ハリウッド一わかりやすいアクションスター、ヴィン・ディーゼル主演のSF超大作。『ピッチ・ブラック』の続編ということだが、あまりおおっぴらには喧伝していない。
前作から5年後、多額の懸賞金をかけられている主人公のリディック(V・ディーゼル)は、やがて旧知の友がいるヘリオン第一惑星へやってきた。ところがいまやこの惑星は、悪の種族ネクロモンガーにより、攻め滅ぼされようとしていた。そこへ現れたエレメンタル族の使者は、リディックこそ、われらの救世主だという予言を告げる。
ストーリーをみるとわかるとおり、前作とはややジャンルの異なった作品になっている。『リディック』は、前作に出演したヴィン・ディーゼルがその後別作品で予想外に大ブレイクしたのをいいことに、彼をさらなるスーパーヒーローに仕立てて作りあげた、壮大なSFアクション超大作だ。
物語は実に大味で、サスペンスフルな展開など望むべくもない。マッチョなハゲが色々な惑星に出かけていって、出会った敵をタコ殴りにするという、まあそんな映画だ。SFにも大胸筋にも興味のない女性などが見たら、ぐっすりと眠ってしまうことだろう。
少なくとも、ヴィン・ディーゼルがここまでブレイクしていなければ、こんな話の続編が作られることはなかったと思うが、できてしまったものは仕方がない。もちろん、お金がかかっているからセットやVFXは凄いし、ヴィン氏はいつものTシャツ姿でナイスな肉体を見せてくれる。……が、どうも今回はあまり迫力を感じない。
その理由を考えてみると、どうやら主人公のリディック自身があまり強そうに見えないという点に気がつく。何しろ、ほぼ瞬間移動して攻撃してくる強大な敵ボスに対し、主人公のリディックは暗闇でも目がみえるという、猫ちゃん並みの特殊能力しか持っていない。おまけに(前作はともかく)今回はそれさえあまり役に立っていないのだ。宣伝コピーでは銀河最強の戦士といっているが、どう見てもそうは思えない。せいぜい場末の酒場でのケンカ最強といったレベルである。観客の心をつかむべき最初のアクションシーンに凄みがないのもまずかった。
演じるヴィン・ディーゼル自身も、せっかく私が『ノックアラウンド・ガイズ』のレビューの時、「もっとバルクアップしたらなお良い」と書いたのに、トレをサボっていたのか今回はあまり筋肉に発達が見られない。絶滅寸前のマッチョスター再来を思わせる存在なだけに、個人的には期待しているのだが。
『リディック』は、独自の作品世界観を確立しようとがんばっているのがわかるが、やはりストーリーに華がなさ過ぎる。いかにSFといえど、もっとも重要なのはこの部分であり、セットや衣装等、細部へのこだわりばかり先行するようでは観客は高い満足を得られない。私としても、予告編の面白さは一級品だったが、本編(とヴィン氏のカラダ)にはちょいと不満の残る作品だった。次回に期待したい。