『サンダーバード』40点(100点満点中)
往年のファンにとっては不完全燃焼か
主に日本とヨーロッパで人気のある(米国では本格的に放送したことがないため知名度は低い)、同名のアクション人形劇のTVシリーズを初めて実写映画化した作品。時代設定はTVシリーズの少々前。まだ学生時代の末っ子アランが主人公だ。
国際救助隊サンダーバードの設立者であるジェフの末っ子アランは、それぞれのオリジナルメカを操って大活躍する兄たちと違い、いまだに救助隊の正式メンバーになれずにいた。そんなある日、宿敵フッドの陰謀で兄たちが捕らえられ、基地を乗っ取られてしまう。残されたアランは、協力者のレディ・ペネロープとともにフッドの野望を阻止せんとするが……。
精巧なマリオネットとアイデアあふれる特撮で人気を博したイギリスのテレビシリーズが、このたびVFX満載のアクション大作として映画化された。往年のファンにとってはたまらないであろう。
原色を使ったセット、音楽、各種メカ、サンダーバード発進時のディテールなど、人形劇版の雰囲気をそのまま再現した映像には懐かしさすら漂う。今回は、アラン以外の兄弟たちの出番はほとんどないが、映画版は早くも続編が企画されているそうなので、そのあたりの活躍は次以降に期待といったところ。
ビジュアル的には、レディ・ペネロープの衣装、そしてもちろん演じる女優さん(ソフィア・マイルズ)がかわいらしくて印象深い。執事とのクールなやりとりも楽しいし、肉体アクションはいかにも映画的で見栄えがする。メカを含めたVFXは、ハリウッドの超大作などに比べると少々薄っぺらいが、現代の映画として極端に劣っているというわけではなく普通だろう。
ストーリーは、若きアランが正式入隊目指して頑張るというもので、このため映画版『サンダーバード』はすっかりティーンエイジャーのお気楽アクション映画となってしまった。また、TVシリーズのオールドファンにとっては、できれば日本語吹き替え版で見たいところだろうが、メインキャストの声をあてているのはジャニーズのアイドルグループV6である。どう見ても演技力を買われて起用されたメンツではないだけに、往年の吹き替え版のファンにとっては厳しいところだろう。このあたり、せっかく中年が心踊るタイトルの映画化だというのに、売り方が間違っているような気がしてならない。
正直なところ、今回の映画化をかつてのファンが存分に楽しめるかというと疑問が残る。TVシリーズを知らない若目の世代にとっても、これといった見所、スペクタクルがないためにすすめにくい。いっそもっと若い人たち、たとえば10代前半くらいのカップルがデートムービーとして見る……あたりが妥当なところかもしれない。