『機関車先生』60点(100点満点中)

素直なつくりのベーシックな感動ドラマ

伊集院静原作、坂口憲二初主演の感動ドラマ。以前にアニメーションで映画化されており、今回は初の実写化となる。

舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さな島、葉名島。ひとつしかない小学校に主人公の臨時教師が赴任してくる。彼はかつて剣道の名選手だったが、対戦中の事故が原因で声を失った。やがて口が「きけない」ことから「機関車先生」と名づけられた彼と子供たち、そして島民らの暖かな交流が始まる。

文部科学省選定の冠がついていることでわかるように、最近では珍しいまっすぐな感動ドラマだ。主人公が何も話せないという点以外、奇をてらった設定も展開もなく、ごくごくベーシックに田舎の人情味や子供たちの純粋さを伝えようとする。彼らと、誠実で優しい機関車先生との交流が2時間かけてじっくりと描かれる。

基本的に主演の坂口憲二に台詞はない。話せない設定なのだから当然だが、スタイルも顔も良い彼には独特の存在感があり、見ていて好ましい。彼を取り巻く生徒を演じる子役たちも上手で、興ざめすることなく物語を追っていける。

個人的には、クライマックスの剣道大会に映像的な迫力がないこと(素朴なドラマの中、唯一動きのある場面だけにこだわってほしかった)と、ラストのストレートすぎる演出に子供たちの教科書的な演技が相まって、見ていて恥ずかしくなるほどのお涙頂戴になっている点が気になった。

『機関車先生』は、映画にひねりや個性を求める人には向かない作品だ。この原作をこのキャストで撮れば、誰が撮っても似たようなものになるだろうというタイプの映画であり、実際アクなどまったくない素直な仕上がりになっている。大体の内容は、このレビューや公式サイト、TV-CMなどをみれば想像ができるだろう。決して大きな満足を得られるような映画ではないだろうが、普通にしっかりしたつくりの感動映画であり、見て損はないといった印象である。



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