『シュレック2』60点(100点満点中)
前作を気に入った人なら楽しめるだろう
アカデミー長編アニメ賞を受賞した前作を持つ、話題のファンタジーアニメPART2。米国では『ファインディング・ニモ』のもつ興行記録を塗り替え、アニメ映画史上最高記録を目下更新中だ。
ドリームワークス製の『シュレック』シリーズは、ディズニー作品との差別化のため、ちょっと辛口のユーモアとパロディが満載、米国の大作アニメとしてはやや大人向けで、ちょっぴり毒のある内容が特徴だ。
PART1が成功したことで、この続編はその味付けをさらに強めている。結果、ディズニーアニメの偽善的な予定調和が嫌いな大人のファンをさらにたくさん取り込んで、興行的には1を超える大成功を収めたというわけだ。
めでたく一緒になったフィオナ姫とシュレックだが、ある日“遠い遠い国”にすむフィオナの父親から、「結婚相手を見せにこい」とばかりに舞踏会の招待状が届く。二人は口うるさいロバのドンキーを連れ長い旅に出るが、目的地にはフィオナと結婚するはずだった王子と魔女の陰謀が待ち受けていた。
ストーリーは前作の直後から始まる完全な続編で、パート1を見ていないとさっぱりわからない。見ていない人はまず前作を見よう。
数々のハリウッド実写映画、おとぎ話とそのキャラクター、ロデオドライブの街並みとショップといった、主にアメリカ人向けのパロディが満載。元ネタがわかる人で、この手のギャグが好きな人なら楽しめるだろう。前作にあった、ヘビなどの小動物を膨らませてそのまま破裂させるといったような、どぎつい笑いも健在だ。単純なストーリーだから子供もOKだが、同時にちょいとひねくれた大人も満足させてくれるつくりになっている。使用される曲の数々も、どちらかといえば30代以上の大人が喜ぶようなセレクションだ。
今回新登場のキャラクターとして、長靴をはいた猫が登場するが、この声をあてるのは濃度の高いルックスが人気のラテン俳優アントニオ・バンデラス。彼の過去作品のパロディをこの猫が劇中で演じるなどといったギャグもあるので、基本的にはオリジナルの声が聞ける字幕版で鑑賞した方がいいだろう。主要なキャラクターの声を誰があてているか、その辺を予習していくのもオススメだ。
フルCGアニメとしての出来映えは、前作より相当パワーアップ。皮膚の質感、雨にぬれた岩の表面の反射光など、気持ち悪いほどリアルだ。隅々まで、まったく手を抜いている様子はない。
『シュレック2』は、「人目など気にせずまっすぐ進め、幸せとは各自で決めるものだ」という普遍的なテーマを、(アメリカの劇場用アニメにしては)辛口でひねったギャグで味付けて作った、ごくごくベーシックな作品だ。基本的には前作の繰り返しなのだが、恐るべきCG技術とたくさんのパロディで、人々をより楽しませようと頑張っている。前作を気に入った人なら、間違いなく楽しめるよくできた続編といえるだろう。
逆にいえば、アニメキャラが現実のヒット曲に乗せて『フラッシュダンス』のワンシーンを真似するようなギャグをみてもしょうがない……というタイプの人にはまったく向かない。日本には大人の楽しめるアニメーションはほかにいくらでもあるので、アメリカ本国ほど大ヒットするとは思えないが、何しろこれだけの話題作である、見て損はない。