『スパイダーマン2』75点(100点満点中)
前作をあらゆる面で超えたアッパレなパート2
アメコミ原作のアクション青春ドラマPART2。世界中で特大ヒットを飛ばした前作のおかげで、今回はハリウッド史上最高額220億円の製作費を投じて作られる事になった。トビー・マグワイア、キルスティン・ダンストといった主要キャストとサム・ライミ監督らスタッフも前作共通である。
前作から二年後。主人公のピーター・パーカーは、大学とバイトとスパイダーマンの3足のわらじ生活が限界に達しようとしていた。愛する人MJとの仲も進展せず、ヒーローとしての正体を誰にも明かせぬプレッシャーから、ついに彼はスパイダーマンをやめようと決心する。だがそのころ、新たな脅威となる敵、ドックオクが登場し、NYを危機におとしめていた。
話題作『スパイダーマン2』は、期待以上のすばらしい出来であった。前作よりはるかにパワーアップした格闘シーンの迫力、空中を飛び回る爽快感、そして数々のスペクタクルシーン。それぞれのVFXに見ごたえがあるだけでなく、ストーリー上の必然性、盛り上がりポイントにピタリと配置され、観客の心を踊らせる。すべての人の期待に見事にこたえたPART2といって良いだろう。
『スパイダーマン』の魅力は、ヒーローものとしての爽快なアクションと共に、悩み多きティーンの青春物語としてのドラマがある。監督は、変身前の主人公の悲しいまでのダメさと、ヒーローとなったときの恐るべきカッコよさのギャップを強調して、その葛藤を演出する。
スパイダーマンが、度々マスクをはずして素顔をみせる姿は、その悩みの深さを象徴するかのようだ。報われないヒーローの姿に、人々は容易に感情移入できるだろう。スパイダーマン=ピーター・パーカーは常に虐げられ、ついに最後の最後で大爆発する。古典的ながら、非常にスカッとする展開だ。
悪役のドクター・オクトパスのビジュアルもすごい。4本の伸縮自在の金属製アームと融合した天才博士という設定なのだが、その動きたるや(すさまじい音響演出もあって)ド迫力である。4本のアームは各自知能を持ち、防御も攻撃も自由自在。壁面もガシガシ登っていく。彼との戦闘で、スパイダーマンは衣装も含めてズタボロになる。そんな姿になってまで報われぬ戦いを続ける姿には泣けてくる。キミは立派な若者だのう。
前作を楽しめた方にはいうまでもないが、スパイダーマンは、その他のマーベルヒーローものと同様に、実在の街(ニューヨーク)を舞台にしながらも、ファンタジックな独自の世界観をもつ作品だ。だから、見るときはあくまで架空のこのアメコミワールドに入り込んでしまうのがコツ。そこで生き生きと動くキャラクターに自分自身を投影することが出来れば、より深く物語を味わえるというものだ。
前作から続く、ウジウジ純愛系のラブストーリーも快調だ。ヒロインにあまり存在感がないのが玉に傷だが、PART2でこの二人の仲ははたして進展するのかどうか?!
あらゆる面で前作を超えた『スパイダーマン2』を、私は万人に広くオススメしたい。ストーリーは完全なる続編なので、劇場に行く前に、PART1の鑑賞は必須。見ていないと面白さは激減する。よく覚えてないなぁ……という方は、面倒でもVHSなりDVDで前作を見直してから、万全の体制で劇場に出かけたほうがよいとアドバイスしておきたい。