『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』50点(100点満点中)
古き良き西部劇の興奮をもう一度
ケビン・コスナーが監督・製作・主演した本格西部劇大作。本国のアメリカでは西部劇としてはなかなかのヒットを飛ばした。
舞台は開拓時代の末期。主人公ら4人は、いまや絶滅寸前となったフリー・グレイザー(牛をつれ、草原を移動しながら大自然の中で家族同然に暮らすカウボーイの小集団)だ。ある日、彼らの一人が町に買出しにいったまま帰らず、リーダー(ロバート・デュヴァル)と主人公(K・コスナー)が迎えに行くと、悪どい町の顔役のもと、なんと仲間は留置場にいれられていた。
昔からのウェスタンの雰囲気と、現代的なテーマを含んだストーリーが魅力の本格的な作品だ。主人公が、町を牛耳る悪者を退治するという構成はクラシカルなムードたっぷり。クライマックスにはリアル志向の銃撃戦があり、ケビン・コスナーのファンも西部劇ファンも共に満足できるだろう。決してアクション重視の作品ではないが、無音の町並みに乾いた銃声が鳴り響く緊迫感には、西部劇ならではの興奮がある。
雄大なアメリカ大陸の中、晴れも嵐も静かに受け入れ、自然と共に生きるフリー・グレイザーの男たちが実に男くさくていい。だが、ストーリーの鍵となり、しっかり纏め上げるのはヒロインの方だ。その意味では、西部劇が苦手な女性が見てもすんなり楽しめると思う。9.11以降のアメリカ映画らしく、ただの善悪対決物ではなく、家族回帰のテーマを重視した物語である。
2時間20分もある大作だが、意外と長さは感じない。寡黙な男たちの友情と、ケビン・コスナーお得意の不器用中年の恋、そして勧善懲悪の安心感あるストーリー。そうしたものを楽しみたい方には向くであろう。何かが突出しているわけではないが、不満な点もない、そんな映画だ。