『テッセラクト』50点(100点満点中)
コンセプトは斬新ながら出来上がったものはやや平凡
「四次元の物語の展開図」とうたった実験的な映画作品。バンコクの安ホテルを舞台に、一見無関係に見える登場人物たちの奇妙に絡みあう運命を斬新な映像で描く。3つの別ストーリーの関連を読者だけが“神の視点”で楽しむことができるという斬新なプロットを持つ原作小説の映画化となる。
タイトルの“テッセラクト”とは四次元立方体の意味。四次元というのは、三次元に時間軸を追加した概念で、三次元に存在する我々が見ることは不可能とされる。よって、4次元の“展開図”を3次元のこの世界に表現するというのが、この映画が挑戦したテーマだそうだ。
これを具体的に説明すると、細切れの断片的映像、シークエンスを不規則に並べ、それを鑑賞者が脳内で組み立てて見るというものだ。似たような手法の映画はほかにもたくさんあり、この構成自体はさほど新鮮というものではない。無関係な人物たちの運命が、あるひとつのアイテムないし出来事を中心にひとつに重なるというストーリーも同様。斬新なオープニングからは、もっとインパクトのある中身を期待したが、少々拍子抜けといった感じがする。
臨場感あふれる音響演出やCG使いは、『the EYE アイ』の監督らしい個性が感じられて好ましいが、全体を見渡すと新しさを感じる要素は少ない。