『白いカラス』55点(100点満点中)
日本人にはわかりにくい題材だが……
ハリウッドトップスターのニコール・キッドマン主演のヒューマン・ドラマ。授業中に発した一語が差別語と取られて職を追われたユダヤ人元大学教授と、夫から虐待を受け逃亡中の掃除婦の悲恋を中心にした物語。
クリントン元大統領と噂になり、社会問題にまでなったモニカ・ルインスキーネタが何度も出てくることでわかるとおり、1990年代後半〜のアメリカが舞台。今以上に人種差別問題がデリケートだったころのお話だ。『白いカラス』は、壮絶で根の深いこの問題を知る事のできる一本ともいえるだろう。
主人公の大学教授は、差別主義者のレッテルを貼られてクビになるわけだが、実はもう一つ彼には大きな秘密がある。この秘密を守ってきたために彼はここまで出世できたのだが、同時に大きな心の闇を抱えてしまったという設定だ。
そして、生まれて初めてこの秘密を共有できる恋人となるのが、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者である上に、自らの子供を死なせてしまった悲しい経験まで持つ孤独な女性(N・キッドマン)である。
傷ついたもの同士が、互いの悩みを分かり合うという構図はよくあるが、この映画の結末にはなかなか考えさせられる。確かに二人は癒しを得た。だがしかし、これは幸せだったのか……といった具合だ。
この映画でも披露しているニコールのヌードは相変わらず息を呑むほどの美しさ。格の上がる脱ぎ方の見本のような人だ。
さて、問題はこの映画のテーマ「人種転換」というものが、恐らく日本人の多くにはピンとこないであろうという点。実感が沸かなければ、興味も薄くなるのはいうまでもない。
余談だが、アメリカ公開版とは結末近くの編集が大きく異なっているという話を聞いた。アチラではアフリカ系アメリカ人に少々評判が悪かったため、変更したとの事だ。私はUS版を見たことはないが、その変更内容を聞いた限りでは、日本公開版の結末のほうがしっくりくると思った。