『海猿』75点(100点満点中)

ありそうでなかった良質のアクションエンターテイメント

海上保安庁の海難救助エキスパート“潜水士”を目指す若者たちの青春を描いたアクション・エンターテイメント。週刊ヤングサンデーに連載され大人気となった佐藤秀峰の原作を映画化したものだ。

ところで、先日このページで同じ日本製青春映画の『下妻物語』を紹介したところ、実際に見た方たちから「本当にすばらしい映画だった」というメールを何通もいただいた。「最近の邦画はつまらないと思っていたがその考えが覆った」という声を聞いたときは、私も嬉しかった。

そんな『下妻物語』に続き、オススメするのがこの『海猿』である。この映画は、100%エンターテイメントに徹した作品で、製作費は比較にならずとも、その出来は本場ハリウッドの大作映画にも劣らない。

空撮やダイナミックな構図を多用した映像、海上保安庁全面協力による本物の艦船の迫力は、スケール感があり見ごたえがある。バックに流れるジャーニーの主題歌や各種劇伴音楽はちょいとストレート過ぎて安直な印象もあるが、娯楽映画なのだし、このくらいでいいのかもしれない。勇壮な音楽が流れる訓練シーンなど、素直にカッコいいと感じられる。

映画は“潜水士”を目指す若者たちの厳しい訓練の様子がメインとなる。そこに文字通りの鬼教官やイヤミなエリート生、落ちこぼれの訓練生仲間といったわかりやすいキャラクターが登場する。伊藤英明演じる主人公の訓練生は、彼らとぶつかりあい、ときに助け合いながら一人前の潜水士へと成長してゆく。

その途中には、加藤あい演じるヒロインとのロマンスもあり飽きさせない。二人とも実にハンサムで、ラブシーンの美しさは特筆ものだ。これはこうした映画にとって大事なことだと私は思っている。

海を舞台にした作品らしく、男の子たちの裸もたくさん出てくる。伊藤英明くんも全裸シーンを熱演、ファン必見だ。

終盤にダルくなる欠点はあるものの、脚本の練りこみ不足からくる興ざめ感や安っぽさはあまり感じない。ストーリーは比較的綺麗にまとまっていおり、最後には期待通りきちんと(?)泣かせてくれる。

『海猿』は、国産のエンターテイメント映画に不満がある人々に、私が『下妻物語』と共に自信を持ってオススメする作品だ。人によっては某アメリカ映画に似てるとか、よくあるパターンだなどと批判されてしまう作品かとは思うが、そういう頭でっかちな映画マニアのいう事など気にする必要は無い。

鑑賞後に若いカップルたちが「楽しかったね!」と素直に言えるであろう、こうした当たり前の娯楽映画こそ、今の日本映画界がもっとも重要視すべきものだ。私は、今後もこの手の国産ブロックバスターをたくさん作ってほしいと願う。それらを成功させれば、邦画界全体が牽引され、景気も上向く。さすれば、文化的価値の高いアート作品や、チャレンジ精神あふれる個性的な作家たちが世に出るチャンスも、連動して増えていくはずだ。だいたい、そんな事まで考えずとも、デートで見に行く映画が外国のものばかり、なんて現状は単純に悲しすぎるではないか。

そんなわけで、『海猿』は洋画風のアクションエンターテイメントが好きな方、原作マンガのファン、そして、男の子のお尻を見るのが好きな女子らに向いている楽しい映画だ。エンドロールの後には、変わった趣向が待っているので最後まで席を立たないよう。



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