『トロイ』90点(100点満点中)

比較的一般人でも見やすい歴史超大作

トロイ戦争を描いた歴史超大作。ブラッド・ピット久々の主演作品で、彼の徹底した役作りも大きな見所だ。

『トロイ』は、ハリウッドで伝統的に作られてきた戦記もの超大作の流れにある作品だが、比較的娯楽要素が強く、万人受けすると思われる仕上がりだ。予告編でも流されている、何万人もの兵や帆船をCGで表現した戦争シーンなどは、『ロード・オブ・ザ・リング』等で類似の場面を体験済みの人にとっては真新しいものではないが、やはり見ごたえがある。

だが『トロイ』の真の見所はそうした大掛かりな映像スペクタクルよりも、伝説の英雄たちの魅力的な競演だろう。中でも映画版の中心となるのが、ブラッド・ピット演じる、無敵のギリシャ戦士アキレスと、トロイ王国の王子にして最強の戦士ヘクトルだ。こちらは190cm近い長身のエリック・バナが演じている。

二人とも、間違いなくこの作品が代表作となるであろう見事な熱演で観客の興奮を誘う。特に、ギリシャ彫刻のような美しい肉体を(時には一糸まとわぬ姿で)見せるブラッド・ピットなど、とても40歳とは思えぬ身軽で力強い動きを見せてくれる。彼ら二人の対決場面は、久々に映画をみて興奮したと言えるほどすばらしいものだった。

今回は、やたらと裸の場面が多い主演のブラッド・ピットだが、見せるにふさわしいいい身体をしている。ディフィニッションばかりが目立っていた以前に比べると体脂肪と筋量共に増え、特に上腕三頭筋の発達が著しい。古代ギリシャの戦士を画面で表現するのにはちょうどいい、すなわち「細いがパワーがありそう」という、バランスのよい肉体を作り上げた。この点は高く評価してあげたい。きっと日本の女性たちが一般的に好むのは、今の彼のような身体であろう。

気になるストーリーは、原作(ギリシャの叙事詩『イリアス』)を中心に数々のエピソードをバランス良く詰め込んだ豪華版だ。有名なお話だから、誰が見ても難しいということはないだろう。なお映画版は、神話的な要素を取り除いた現実の物語として構成してある。決して単純な善悪の対決ではなく、両陣営に魅力的な男女が多数登場し、それぞれのドラマが展開するという英雄群像劇だ。

役者も音楽も美術もパーフェクト。『トロイ』は間違いなく本年度を代表するであろう「面白い映画」だ。上映時間は2時間40分を超えるが、ぜひとも時間の都合をつけて見に行ってもらいたいと願う。

トロイ戦争についての予備知識ゼロな方にはさすがにつらいが、比較的一般向けにやさしく作られている。興味があるならば、年齢を問わずオススメできる映画といえよう。



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