『パッション』30点（100点満点中）

クリスチャン専用の衝撃作

タイトルのパッションとは「キリストの受難」のこと。つまり新約聖書の「最後の晩餐からキリストの処刑＆復活まで」を描いた宗教的な問題作。

監督のメル・ギブソンは、なんと27億円もの私財を投じて本作を作ったが、幸いにもアメリカでは『ロード・オブ・ザ・リング』を上回るほどのとんでもない大ヒットを記録しているので、今ごろは胸をなでおろしていることだろう。

さて、見てのとおり点数は30点と一見低いが、私のサイトの点数は、必ずしも「私個人の満足度」や「映画の出来映え」を表しているわけではない。主観的な好みで点数をつけるサイトはアマチュア映画ファンの皆さんがやっているし、芸術作品としての正当な評価は他のプロが学術的なアプローチで試みている。

『超映画批評』は、読者の皆さんの満足度を点数の形で（私が予測して）つけている事で、他との差別化を図ったサイトだ。

映画業界にとってもっとも大事にすべき「マニアではない普通のお客さん」に信頼される情報提供をするためには、この方法がベストだと思い、また自分でもこういうサイトがほしいと思ったので作ったというわけだ。

さて、何が言いたいかといえば、映画『パッション』の出来は、決して点数から予測されるような悪いものではないということだ。何気なく映画館にぶらりと入り込んだ人が見れば30点程度の満足度かもしれないが、宗教的な教養のある方や熱心なキリスト教信者が見たら、相当に興味深い作品であることは間違いない。

さて、『パッション』がどんな映画かというと、キリストがムチうたれ、殴られ、血を流し、それでもとまらない残虐な仕打ちを受け、最後には処刑されてしまうというものだ。その様子を見ている周りの人間や、虐待している男たちは、瀕死のキリストを見てゲラゲラと笑っている。2時間の間、そんな描写が絶え間なく延々と続く。

見ているほうが『痛い』と感じるほどの残酷描写だから、キリスト教の熱心な信者にとってはたまらない。アメリカでは2名の観客がショック死したそうだが、それもわかる気がする。悪趣味ととられかねないほどの虐待が続くが、下手に中途半端にせず、徹底的に描いた姿勢には潔さを感じる。一例として、キリストの手を十字架に釘で打ち付ける場面があるが、それだけでも5分以上続くのだ。そこまでやるかと思うが、この映画はとにかくやたらと引っ張り、スローを多用した演出で、処刑の悲惨さを伝える。

基本的に、「わかる方のみどうぞ」という映画だから、新約聖書の内容に関する知識のない方には厳しい。登場人物の紹介などもほぼ皆無だし、処刑から復活までの流れも唐突に感じられるかもしれないが、これはクリスチャンを対象にした映画なのだから当然。

まとめとして、『パッション』はキリストの受難の映像化に強い興味のある方、またはクリスチャンの方専用といって良い映画だ。それ以外の方が見ても、得るものは少ない。そんなわけで日本ではアメリカほどの大ヒットは望めないだろうが、どこまで話題になるか。興味深いところではある。