『コールド・マウンテン』70点(100点満点中)
いいものを見せてもらったという満足感が得られる
“21世紀の『風と共に去りぬ』”と宣伝される、アメリカの南北戦争を舞台にした壮大なラブストーリー。大物キャストがずらりと並び、上映時間も2時間35分という堂々たる大作だ。
軍を脱走した主人公は、戦争のために引き離された恋人のもとへひたすら徒歩で向かう。その距離なんと500km。たとえ友軍でも、見つかれば脱走兵は大罪。この緊迫感の中で、いくつものエピソードが描かれる。過酷な逃亡劇の最中、優しき人々に助けられたり、奇妙な出会いを経たりして、彼の故郷への旅路は続く。
これと交互に、彼を待つ恋人のドラマが展開する。いいトコのお嬢さんだったヒロインが、戦争の混乱の中でサバイバルするため、徐々にたくましく変化、成長してゆく姿だ。彼女に女だけでも生きていくための術を教える流れ者の女を、レニー・ゼルウィガーが演じているが、『シカゴ』や『恋は邪魔者』で演じたかわいらしい女とはまったく別人のような変貌振りに仰天する。
キャストに注目して鑑賞される方には、そうした所も大きな見所になるだろう。これは余談だが、来日時に見た彼女はほっそりと痩せていて、下半身のラインの綺麗さにはビックリした。私の見立てでは、あのお尻の形の良さはハリウッド1であろう。ブリジッドジョーンズのデカ尻のイメージは、ここで一気に覆された。
さて、話をお尻から本題に戻すと、『コールド・マウンテン』では、主人公が決死の覚悟で会いに行く恋人が、決して長く連れ添った相手ではなく、ただ一度キスを交わしただけの女性という点が、よりドラマティックな効果を生んでいる。そんなわずかな交流に希望を見出すのは、戦時中という異常な状況ならではというべきか。
ともあれ、二人の愛は平時の恋愛よりずっと美しく、より価値あるもののように感じられる。戦争で殺し合うことにより、精神的に追い詰められた人間が、最後のよすがとして小さな愛に命をかける姿は感動的だ。
ただし、上映時間が長いし中身も濃いので、観客には分厚い長編小説を一気に読みにいくくらいの覚悟が必要。そうした体力のあるときに、本気でとりかかるタイプの映画というわけだ。あなたがもし、この手のやや重たい歴史恋愛物を好むタイプの観客であれば、きっと十分な見ごたえを感じて劇場を後にできる。