『ドラムライン』70点(100点満点中)
新鮮な世界との出会いに満足できる作品
大学のマーチングバンドという真新しい題材をメインに扱った青春ドラマ。凄腕のドラマーである主人公の活躍と成長を描く。
とはいうものの、青春ドラマのほうを期待しちゃいけない。スポ根ドラマだが、泣けはしない。
『ドラムライン』唯一にして最大のウリは、ド迫力のマーチング・バンド演奏シーン。アメリカン・フットボールの試合などを見に行くと、こうしたバンドがスティックさばきや行進の隊列の美しさなどを見せてくれるものだが、それだけをここまで深く突っ込んで紹介した映画は初めてではなかろうか。
この見せ方がまた、いかにもアメリカ映画的な派手なもので、画面に登場する黒人バンドの様子は、ただの大学ブラスバンド部(?)の姿とは思えないほどカッコいいし、オシャレだ。大学対抗のドラム対決などと聞けば、一見「小太鼓の技術を競うなんてえらく地味だな」などと思ってしまうが、そうした先入観を吹き飛ばすほど見ごたえがある。さすがはアメリカ、どんなものでもショーアップしてエンタテイメントとしてしまう国民性には感服する。ここはあちらのマーチングバンド文化の紹介映画として、素直に楽しむとしよう。
撮影にも工夫を凝らし、あらゆる角度から彼らの魅力を伝えようとしているのがわかる。マーチングバンドの皆さんが、これほど情熱を傾け、技術を磨いているとわかれば、ぜひ自分も目指したいと思う人々が増えることだろう。
これなら音楽系の部活などをやっていた方はもちろん、そうでない方にとっても新鮮で面白いはず。興味をもたれた方は、音響設備のよい劇場に出向いてみてはいかがだろう。何しろこの映画の最大の見所は迫力の映像と音響なのだから、映画館に出かけて行く価値は大いにある。