『恋愛適齢期』60点(100点満点中)
54歳女と63歳男のロマンティックコメディ
オスカー受賞俳優が豪華に競演するロマンティック・コメディ。タイトルのとおり、「人はいつまで恋ができるのか?」すなわち、恋と年齢という普遍的なテーマに挑んだ内容となっている。
そんなわけでこの映画のヒロインはなんと54歳、劇中ではヌードもセックスシーンもこなすという大盤振る舞いだ。……なんて事を書くと、若い男性諸氏は一目散に劇場から遠ざかってしまうかもしれないが、なかなかどうして、『恋愛適齢期』はオトナの人のみならず、若い人が見てもなかなか楽しめる出来映えである。
主人公の初老のプレイボーイと同じように、最初は「女は若い子に限るのう、ホッホッホ」と思っていた観客は、ストーリーが進行していくと、徐々にその考えが改まってくる。そうした意識変化を無理なく実現させたのは、巧みな演出と、ユーモアあふれる感情移入しやすいキャラクター造形の賜物だ。特に後者においては、主演二人のオスカー俳優の魅力と実力が大いに寄与しているのはいうまでもない。彼らのセリフや行動には芝居じみたところはなく自然だが、とくに、久々に男性との熱烈なセックスを終えた直後のヒロインの演技は必見だ。この場面の彼女の気持ちに共感できる女性は、きっと多いであろう。
そんなわけで、50を超えた熟女がでずっぱりで「恋する女の子」を演じる『恋愛適齢期』は、一歩間違えば恐ろしい映画になってしまうところだったが、予想外に上手に題材を料理した作品といえる。ただし、昔でいうトレンディドラマの1シリーズ分くらいの内容を無理やり詰め込んだようなゴチャゴチャ感がある点と、ロマコメ特有のご都合主義が鼻につく点はマイナス。
とはいえ、楽しく笑って見ることができて、映画館を出たらこの映画について30分くらいは会話が弾む、そうしたロマコメの必要事項はとりあえず満たしているので、デートムービーとしては及第点といえよう。