『クイール』40点(100点満点中)

犬好き専用映画

盲導犬クイールの一生を描いた映画。盲導犬の献身的な働きを描いた感動ドラマ……というわけでもなく、単にカワイイお犬様のお姿をみるという、動物映画の趣きが強い。

つまりこの映画の目的は、動物好きを泣かせるという一点にあると思われる。その観点から見れば、まあ及第点といった出来だろう。犬好きに媚びているとしか思えないようなカットも多数見受けられたが、それでも「カワイイ〜」の声がそこかしこから漏れる事が予想される、まあ、そんな映画である。

内容は、文部省が喜びそうな、かつ子供の教育によさそうな健全な物語。あまり複雑な構成のドラマではなく、ただ犬の一生を追っただけという、あまり面白くないつくりになっている。

盲導犬の育成は難しく、その過程では心を鬼にしなければならぬことも多い。そしてそこから生まれる人間と犬の強い絆は、私たちの想像を越えるものがあるという。そうした点をドラマチックに描くことはそう難しくないはずだが、この映画の平坦なストーリー展開はどうしてものか。

重要な場面で使われるCGの稚拙さも痛い。あれを冷めずに見ていられる人は、かなり限られてこよう。カワイイ子犬を見ているだけで大喜びできる犬好きの方、心のきれいな素直な方などならなんとか大丈夫かな、とは思うが、動物映画としては平均以下といったところ。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.