『イノセンス』70点(100点満点中)
最初の一秒で感じる圧倒的なクォリティ
押井守監督、待望の新作アニメーション超大作。タイトルは『イノセンス』だが、中身は『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の完全なる続編。情報量が類を見ないくらい多く、本格的なSF作品のなかでもとりわけ難解な部類に入るといわれる原作を持つ。この続編も、最低限前作を見ていないと理解するのは困難。抽象的な形で哲学的主張が描かれる。一度見て意味不明なのは当たり前、10回でも20回でも見てほしい……というのが、監督の本音であろうと思わせる作品だ。
ところで、2004年はアニメーション映画の年で、このあとには大友克洋監督『スチームボーイ』、宮崎駿監督『ハウルの動く城』と、日本のみならず世界から注目を浴びる超大作が公開を予定されている。そんな中、先陣を切って世界に向けて公開されるのがこの『イノセンス』というわけだ。
その期待に応えるべく、本作はとてつもなく気合の入った仕上がりになっている。映画が始まった1秒目から、その圧倒的なクォリティの高さに驚かされる。最初のシークエンスが終わり一息ついたとき、周りから「すっげぇー……」という声が聞こえてきたが同感だ。
私は、今週公開の『ケイナ』(フランス)や、もうすぐ公開の『アップルシード』(日本)といった、それなりによくできた作品のあとにこれをみたわけだが、正直なところ前二者は『イノセンス』のインパクトの前に吹き飛んでしまった。『イノセンス』は、品質だけだったら100点満点、文句なしの世界一だ。また、複数回の鑑賞に耐えるだけの高い芸術性と知的な内容は、完全に大人向きの作品といえるだろう。
私としては、この独自性と圧倒的な映像美を高く買いたい。原作を読んでいないため、当たり前のように固有の用語を連発するあたり、やたらとわかりにくいものであったが、終わった直後、すぐもう一回みたいと思わせるほどの魅力があった。そのへんを「味」だと理解できる人であれば、これはもうたまらない作品といえる。