『赤い月』60点(100点満点中)
重厚で大作感ある一本だが……
常盤貴子主演の邦画ドラマ。全体的に薄い色調の、重厚な雰囲気を漂わせる歴史大作だ。原作者が、自分の母をモデルにしたという主人公を常盤が演じる。
終戦まぎわの混乱した時代をたくましく、奔放に生きた女性の生き様が描かれる。例えばこの女性は、まだ小さい子供に恋人とのH現場を見られても堂々としている。この時代の空気に似合わぬ、愛に生きた自由人というわけだ。
その直後、父親以外と恋をする母(常盤)を見てすねる子供に常盤が、「(こんな悲惨な時代を)生きていくためには愛する人が必要なの!」と逆ギレ(?)する場面がある。戦争で夫も財産も使用人も邸宅も、つまり成功の証をすべて失った彼女が、それでもたくましく生きる、感動的な宣言シーンというわけだ。
しかし、そうなると少々矛盾を感じなくもない。なぜならヒロインはそのセックス相手に、「結婚当時から好きだったわ」などと告白しているのだから。こんな時代になる前から好きなのならば、この場面の感動はスポイルされてしまう。
『赤い月』は、歴史ものをゆったりと楽しむ事のできる大人のお客さん向けの一本。常盤貴子にもう少し脱ぎっぷりのよさがあればなおいいのだが、映像的にはしっかりとしているし、テレビドラマとの差別化には成功している。