『みんなのうた』50点(100点満点中)
お客を選ぶマニアックな映画だが、それなりによく出来ている
60年代(っぽい)フォークソングを題材にした、嘘んこドキュメンタリー。ようするに、ドキュメンタリーっぽくみせかけた劇映画という事だ。かつて時代を風靡したフォーク歌手、グループらの現在を追い、最後に全員が一堂に会して復活コンサートを行うというのがおおまかなストーリーだ。
演技はすべて即興、脚本には台詞ひとつ書いていないアドリブ大会だ。こんな作風だから、この監督についてこれる俳優はそうそうおらず、主要なキャストは常に似通っている。これはこれで一つの壮大な「芸」だとは思うが、はて、日本人の我々にとってはどうだろう。
本作を楽しむためには、まず、あちらのフォーク文化に詳しいということが必須。ちりばめられたパロディネタを、そうでないと楽しめない。満員だった試写室のギャグシーンでの無反応ぶりがそれを証明している。
このノリについてこれるのは、特に相当マニアックな層に限られる気がする。ターゲットに入ってないなと感じる人は、ほかの作品のチケットを買うほうが無難だ。
音楽をテーマにしているだけあって、音響デザインの品質はすばらしい。演奏シーンは、楽曲のよさもあって、特に見ごたえがある。お客さんを選ぶ映画だから、それだけを目当てに見るのはどうかと思うが、ツボにはまった人にとってはたまらない一本になろう。