『ミスティック・リバー』50点(100点満点中)

ネームバリューに惑わされがちだが

同名のミステリが原作のドラマ。まず、この物語は悲劇なので、映画で感動して泣きたいとか、爽快感を得たいとか、そういう人にはまったく向いていない。また、事件の犯人や結末などは、ごくごく平凡で、あまり優れたものではない。要するにこの物語の魅力は、小説版も映画版も、登場人物の深い人物造形と心理描写という点にあるわけだ。

人間一人一人をしっかり描くため、映画も2時間18分という長大さを誇るが、だからといってうまくいくとは限らないのが映画の難しいところ。

少年時代〜現在の”失われた25年間”は劇中では描かれないので、役者がうまく演技力で埋めねばならないわけだが、少年時代と成長後の間には大きな溝が感じられる。そもそも、役者の実年齢が高すぎて、36歳の設定には老けすぎている。ミスキャストとまでは言わないが、いかに実力のある役者たちとはいえ、この役柄は少々難しすぎたとはいえまいか。

ネームバリューというのは恐ろしいもので、本作のように、演技派で知られる役者が並んでいると、を見ただけで無条件に「すばらしい演技!」と思い込んでしまいがちだが、よく考えてみると、『ミスティックリバー』の主人公の演技は、決して下手ではないが、全体の演出の中で、それほど成功しているというわけでもない。

英語のわからない日本人は、わずか数文字の字幕による台詞で物語を楽しむしかないわけだが、『ミスティックリバー』のような映画の場合、そのような限られた情報だけで、登場人物たちの内面の機敏まで感じ取るのは難しい。結局、重厚なはずのドラマが想像以上に軽い印象に感じられ、原作の魅力も伝わりにくい。



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