『ミシェル・ヴァイヨン』50点(100点満点中)

クルマ好きがデート用として鑑賞するのに適している

ヨーロッパ圏で45年間も続く長寿コミック初の実写映画化。日本語では今まで出版されていなかったそうだ。というわけで、大スターが出ていなくとも、あちらではタイトルだけで話題を呼べるが、日本では商業的に苦戦が予想されるという一本である。

では、ヨーロッパでの『ミシェル・ヴァイヨン』とは、どのくらいの知名度がある原作なのだろう。私が宣伝会社の美人のお姉さんに聞いてみたところ、日本で言うサザエさん並であるとの事であった。

それほどの原作の映画化であるから、フランス映画としてはかなりお金もかけた力作となっている。レースシーンの迫力はなかなかのもので、なんとこの映像は、ル・マン24時間耐久レースに実際に参戦して、レース中に撮影したものだそうである。しかも『ミシェル・ヴァイヨン』チームは、実際に良い成績を収め、観客の喝采を浴びたそうだ。

そんなわけで、レースの映像は音響も大迫力のリアル志向。ウソっぽさは出さないように心がけて作られている。クレーンを多用した撮影にはメリハリがあり、見ているだけで快感を得られるほどだ。

これに対し、合間に挿入されるドラマ部分は荒唐無稽なアホっぽいものだ。なんたって、敵の女の行動が良くわからない。まあ、この意味は見てもらえばわかると思うが……。何にせよ、原作を知らない日本人にとっては、良くできたレース映像を見るための映画と割り切ったほうがよさそうである。

特に、F1中継などを楽しみにしているレースファンにとっては必見である。『ミシェル・ヴァイヨン』は、ほとんどクルマが走っているだけの映画なので、ピット作業やレースのルールについて鑑賞後にでも、横のガールフレンドに解説してあげたら、尊敬されちゃうかもしれない。うまく行けば、そのままその子に乗車できるかもしれませんぞ。



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