『私の小さな楽園』55点(100点満点中)

一人の女性をシェアする男性たちの心理とは

3人の男性と暮らす女性と、その奇妙な同居生活を描いたブラジル映画。カンヌなど、各地の映画祭で評判になった。

この女性、決して美人というわけではなく、失礼ながらただの太ったオバサンにみえる。それでも母性豊かで明るい彼女のもとには、年齢も見た目もまったく違う3人の男が集まってくる。やがて彼らが共同生活を送りはじめるというのは、我々の目にはかなり奇妙に写るだろう。

ちなみにこの女性、もちろん3人全部と肉体関係があり、最初の一人とは子供もいるが、その実際の父親は実は二人目の男で……と、なかなか複雑だ。

この奇抜な設定から、逆に普遍的な男性側の恋愛心理が浮き彫りになる。男性の間では、彼女を巡る嫉妬が渦巻くが、憎々しかったはずの相手と、新たなライバルに対抗するべく派閥を作ったりするこの矛盾。この小さな家族の中に、さまざまな人間関係のドラマが発生する。これはなかなか面白い。

ただ、私にとってこの題材自体はさほど刺激的なものではなかった。一妻多夫、結構結構、その分、外で浮気できるし大歓迎──なんて不謹慎なコトを想像してしまう私の思考回路は、明らかに間違っている。

とはいえ、「いい女から離れる孤独よりは、彼女をシェアしてでも一緒にいたい」という男の心理は、多くの人にとって新鮮に写るはず。作中に出てくる諸問題を無理なく、ある程度の説得力を持って描いている点で、本作は本当によくできている。映画祭で批評家に受けたというのも、わからないではない。



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