『女はみんな生きている』70点(100点満点中)

フェミニストが飛び付きそうな題名だがさにあらず

平凡な主婦が、謎の娼婦と衝撃的な出会いをし、女として、人間としての生き方を再考してゆく過程を、ユーモアたっぷりに描いたフランス製コメディ。

ずいぶんとまあ、すごい邦題を付けたものである。映画の内容が、男の支配下にあるかのような専業主婦業に疑問を持ち、自由にひとり立ちしている娼婦の生き方に憧れてゆく主婦の話であるからか、実にフェミニズム的な印象を受けるタイトルだ。

実際、この映画の監督(女性)は、30年間も事実婚で子供も3人いるそうで、だからかどうか知らないが、映画自体からもフェミ臭がぷんぷんする。これで、結末までそういう単純な思想のもとに作られた映画であれば、一刀両断、斬り捨てる所だが、実はこの映画、そうそう捨てたものではない。ここを突っ込んで行くと、未見の方の興味をそぐので、残念ながら今はやめておくが。とにかく言えることは、フェミニストが喜ぶような、単純なジェンダーなんたらという内容ではないと言うことだ。

監督はコメディの名手といわれるだけあって、笑わせ方が実に巧みだ。全編、中だるみする部分はまったく無い。テンポのいい音楽にのって、ラストまで一気に見せるパワフルな娯楽映画である。

女性のみならず、男性が見ても充分に楽しめる作品である。比較的わかりやすい内容で、肩もこらずに見れるから、何を見るか迷ったら、ぜひ候補にいれてみてほしいと思う。



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