『ブルドッグ』30点(100点満点中)
宣伝部の悲壮なる戦いが見えるようだ
人気アクションスター、ヴィン・ディーゼル主演のアクションドラマ。早速だがこの映画、配給のGAGAの宣伝担当のチームの方が、さぞ苦労したであろうと想像させるトホホな作品である。
なんといってもまず、邦題の付けようのない平凡な内容がつらい。愛する妻を悪い組織に殺され、復讐する捜査官……と言う、おそらくハリウッド史の中で20万回くらいリメイクされたストーリーであるから、いまさら他と差別化できる邦題など思い浮かぶはずもない。
きっと六本木の綺麗な社屋の一室で、何度も何度も徹夜の会議を開き、就職活動の狭き門を通った優秀なるパブリシストの誰かがふと呟いたのだ。
「『ブルドッグ』ってのはどうですかね?」
するとリーダーがいう。
「なんだそれは、意味がわからんぞ」
「いや……ヴィン・ディーゼルって顔が恐いから……」
「そうか、それも一理あるな、それにするか」
と、きっとこんな感じでやむなく決まったのではないかと勝手に想像したくなる。そう考えると、みれば見るほど、味わいのあるタイトルである。ブルドッグ、犬は出ないが、ブルドッグ、ああ……。
このタイトルが決まったときから、宣伝部の悲壮なる戦いは始まったのだ。私は彼らに同情する。別に、彼らが『ブルドッグ』の平凡なガンアクションシーンを撮影したわけでも、パンフを見なおしても、いまだによく思い出せないストーリーを企画したわけでもないのだ。
だから彼らが、あのヴィン・ディーゼルのアクションを、「スタイリッシュ・アクション」と表現しようと、私はなにも言いはしない。私が彼らに協力ができる事があるとすれば、「ダメ映画好きの人は、絶対『ブルドッグ』を見逃すな!」と、ここで書くことくらいだ。
相変わらず白いTシャツがトレードマークのマッチョスター、ヴィン・ディーゼルの活躍を、ファンなら見逃してはなるまい。独特の低い声は相変わらず魅力的だし、今回はひげまで生やすという大サービスだ。さあ、みんなも劇場に出かけよう!
……こんな感じじゃダメですかね、GAGAさん?