『昭和歌謡大全集』70点(100点満点中)

ばかばかしいが面白い

村上龍原作の、オバサンと若者が殺しあうナンセンスな娯楽映画。ややチープ感のあるCGも要所に使って、両者の殺し合い、復習劇を興味深く見せる。

お互いのグループをひとりひとり殺し合いながら、成功するたびにパーティを開いたりするブラックな登場人物たち。やがて戦いはエスカレートして、ロケット砲やらなにやらの兵器まで入手しだすという、おバカな感覚の映画である。ラストには、想像を超える結末がまっている。

私はこの原作は未読なのだが、さぞ面白かろう。もちろん、映画だけ見ても、充分楽しめる。とくに俳優達が、実に見事に役作りをした。たとえば私は、森尾由美本人を見た事があるが、「こんな美人が世の中にいるものか……」と、当時は衝撃を受けたものだ。だが、『昭和歌謡大全集』の彼女は、どこからどうみても街のオバサンだ。あまり目立たないことだが、こうした事はとても大事な事だ。

脇役で出て来る市川実和子のえらいインパクトの強さといい、松田龍平の独特の存在感といい、役者関係は、すべてが上手い具合に作用している。もともとストーリーの面白さには定評がある作品だから、これで面白くならないわけがない。

ブラックなギャグが笑える人という条件付きだが、今週たくさん公開されている実写の日本映画の中では、私はこれを第一に推す。こういう無茶苦茶なストーリーの娯楽映画を、もっとたくさん、たっぷりお金をかけて作ってほしいものだ。



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