『フレディvsジェイソン』80点(100点満点中)

恐くて笑える、爽快なホラームービーだ

『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ、『13日の金曜日』シリーズのジェイソン、この2大殺人鬼が対決するという、企画ものホラー映画。ホラー映画史上、もっとも有名なこの2人が1つの映画で大暴れするという事で、ホラーファンにとっては見逃せない一本だろう。

一応人間のヒロインが主人公で、彼女は、同時にこの2人の殺人鬼に狙われるという、映画史上、もっとも気の毒な状況に追いこまれるわけだが、そこはそれ、知恵と勇気でこの苦境をなんとか乗り越えようとするわけだ。

そしてまあ、いろいろあってラストでは殺人鬼同士が対決するわけだが、このバトルは実に見応えがあり、満足できる。戦いの舞台設定もいいし(1Rは夢世界というフレディの土俵、2Rはジェイソン有利の”ある場所”で戦う)、2人の対決に人間が絡む事で、ある種の臨場感が加わり、クライマックスの楽しさが濃厚になった。2人とも悪役なのに、いつのまにかどちらかの殺人鬼に肩入れしている自分に苦笑する。

また、この映画はストーリーが非常によく出来ている。「フレディとジェイソン2大スター対決」という金看板一枚だけで勝負する映画ではないのだ。一本の映画として見て、充分満足度の高い作品になっていたのである。

もともとの両作品(『エルム街〜』『13日〜』)からの伝統である、血がドバドバ出て、被害者が残酷な殺され方をするスプラッター路線も健在。残酷ではあるが、同時に滑稽でもあり、ジェイソンが、セックスにふけるバカ若者を殺すシーンなどは、場内から笑いが出たほどである。この手の映画は、そういう楽しみ方もあるわけだ。

『エルム街〜』『13日〜』両方のシリーズを、最低でも何本か見たことがあるファンにとって、『フレディvsジェイソン』は最高に楽しめる、素晴らしいホラー映画であることは疑いがない。「ジェイソンって誰?」なんていう方にはさすがにすすめようがないが、そうでなければ是非とも映画館にいって見てほしいと思う。

アメリカ製のライトなスプラッター・ムービーだから、残酷シーンといっても後を引くようなものはないし、ハダカもあまりどぎついものは出ない。お化け屋敷に行くようなつもりで、デートに誘うのも悪くないだろう。



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