『シェフと素顔と、おいしい時間』80点(100点満点中)

上品でまっとうな、おすすめロマンティックコメディ

ジャン・レノとジュリエット・ビノシュという、フランスの誇る国際派スターが始めて競演したロマンティック・コメディ。

フランスの映画というと、たとえロマコメであっても、ひねった結末を期待する向きは多いだろうが、『シェフと素顔と、おいしい時間』は、比較的アメリカ的な、ストレートなストーリーである。つまり、ちょっとかわったシチュエーションで起こる数々の出来事や会話で笑わせ、最後にはちょっとホロリとさせる、王道の展開である。ロマコメ本来のお客さまである、映画なんてせいぜい年に数回程度というライトユーザーを中心に、存分に楽しませてくれる作品といえる。

音楽は、リュック・ベッソン作品でおなじみのエリック・セラ(『レオン』)で、とても感動的なメロディを聞かせてくれる。涙腺の開放に一役買っている。

ジュリエット・ビノシュは、けっこういいトシなのだが、話が進むほどに魅力的な女に見えてくるヒロインを、存在感バッチリで演じる。相手役のジャン・レノも期待通りで、ほとんどこの2人しか出てこない映画とはいえ、決して途中で飽きる事はないだろう。

ラストシーンは、絶妙な所で物語が幕をとじ、エンドロールが流れる。このへんのセンスの良さにはシビれる。思わず拍手をしたくなるような、気持ちのいい終わり方である。

最近のアメリカ製ロマコメが、どうも不発続きだという方や、30代くらいのオトナのカップルの方、主演2人のファンの方、そして、笑って泣ける恋愛映画をお望みの方には、ぜひ本作をオススメする。きっと、大きな満足を得て、鑑賞後のディナーでの話題も進むことだろう。



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