『ファム・ファタール』60点(100点満点中)

オチはイマイチだが、見所はたくさんある大人のサスペンス

エンターテイメントの巨匠、ブライアン・デ・パルマ監督(『ミッション・インポッシブル』)によるサスペンス。やたらと凝る特徴的なカメラワークは、スタイリッシュと評される。ちなみに音楽は坂本龍一。

品はいいが、イマイチ芸のないサスペンスである。『ファム・ファタール』は、パリの素晴らしい風景、この世のものとは思えないほど美しいプロポーションを持った女性たちに彩られ、監督の美的センスがいかんなく発揮されたゴージャスな映像美を持つが、サスペンスの最重要点であるオチが弱いのである。

見てもらえばわかるが、「これだけ話を進めておいてそのオチかよ」、と文句の1つも言いたくなる。しかも、そのネタには必然性というものがなく、単に驚かせるためだけの仕掛けなのである。これだと、どうしてもミステリとしての評価は下がる。

非科学的な要素が含まれているので、真相を知ったときも「なんだそれ?」と冷める。そして、その先の、2段目以降のオチがバレバレである。こういうどんでん返しはイマイチだ。

それにしても、この映画に出てくる女優たちのスタイルの良さは普通じゃない。まず、主演は、どこかで見た気がすると思ったら、『X-メン』のミスティーク役(全身ボディペインティング女)の女優であった。彼女の推薦で、超豪華な宝石付き蛇型下着(?)をつける役をゲットした女性は、グッチの専属モデルでもある。この、人類の奇跡みたいなナイスバディの二人は、劇中、熱烈濃厚なラブ・シーンを演じているが、これはかなりの見所である。

オチはイマイチとはいえ、デ・パルマ監督ならではの美しい映像と、坂本龍一の音楽、美しい女性たちとアントニオ・バンデラスの濃い顔、そのへんを見るだけでも損した気分にはならない『ファム・ファタール』。大人同士のデートには、なかなか適した一品である。



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