『トレジャー・プラネット』80点(100点満点中)

子供も大人も楽しめる、これぞ娯楽映画の見本

冒険小説の古典『宝島』を原作にした、ディズニー・アニメーション。アカデミー賞の長編アニメ部門を『千と千尋の神隠し』と争った。

『トレジャー・プラネット』は、まさにディズニー、まさにハリウッド、という映画である。一切奇をてらわず、ストレートなストーリーで真っ向勝負、そこがいい。

『宝島』が原作とはいえ、舞台は宇宙。現代的に、設定を少々変更してあるのがミソである。そのアイデアのおかげで、空を飛ぶスノボーや重厚な宇宙船など、絵的に派手な見せ場を作ることが可能になった。話によると、このアイデア自体は17年前に考えられたが、最近技術的にようやく表現可能になったので、本作の製作が始まったのだという。

アクションシーンはスピード感満点で、カメラも主人公の目線。だから、まるでディズニーランドのアトラクションに乗っているかのような、バーチャルな体験が出来るというわけである。製作者が、劇場でこの映画を見る観客の視点を、ちゃんと意識して作っている映画なので、非常に満足度は高いだろう。

宇宙ものとして蘇った『宝島』だが、海賊時代の雰囲気も上手く出しており、少年時代に読んだときのワクワク感を、きっと大人も思い出せる事だろう。無駄なシーンは一切無く、とてもテンポのよい活劇だ。『トレジャー・プラネット』は、けっして子供専用ではない、大人でも楽しめる良質なアニメーションなのである。

なお『トレジャー・プラネット』は、相当新しい技術で作られている。、実に70%がCGで描かれており、登場人物のシルバーというキャラクターは、手書きとCGが半分ずつという、珍しい描き方をされている。とはいえ素人にとっては、ここ数年の、他のディズニーCGアニメと見た目上で大差はない。ようは製作側にとっての、大幅な技術向上ということだ。

しかしこうしてみると、アニメーション作品に人気が集まる理由がよくわかる。それは、アメリカ製の長編アニメにはハズレが少なく、出来が非常に安定しているからである。これは、特に、たまにしか映画館にいかないお客さんにとっては、大変重要な事なのである。せっかく出かけるなら、誰だってハズレはつかみたくないし、だからこそ、毎週このサイトを見に来てくれる人がいるのだ。(もちろん、そうした人々のために、私もこれを書いている)

その点『トレジャー・プラネット』には、年代を超え、なるべく多くの人を楽しませようという、明確なポリシーが存在している。これは、決して邦画(特に実写のエンターテイメント作品)には無いものだ。これでは、たまに映画を見ようというお客さんが、アメリカ製長編アニメの方を選ぶのも当然なのである。



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