『シティ・オブ・ゴッド』70点(100点満点中)

構成がしっかりしており、オチにも驚く

実際にスラム出身の作者による小説を映画化した群像劇。ブラジル映画だが、本国では大統領までもが「この映画おもろいから、みんな見ときなさい」と演説したというほどで、当然大ヒットを記録。

かの国の実在のスラムを舞台に、その裏側をリアルに、残酷に、でも独特の明るさでカラッと描いており、非常に新鮮。

原作の小説は、えらいボリュームのある話だそうで、その内容を聞くと、よくもこんな短時間に(といっても130分だが)まとめられたものだと感心する。何しろ、10年単位の年月を描く話なのである。

カメラがいいし、テンポのいい展開、地に足がついたリアルな視点と、裏社会という魅力ある題材のおかげで、130分間はあっという間だ。人物の描き分けもきっちり行われており、大量の登場人物が、すんなり頭に入ってくる。全体のプロットもしっかりしている。

また、映画の終わり方が実にグッド。「おいおい、マジかよ〜」ってな驚きを得られるようになっている。実に上手い。

子供も大量に出てくるが、スラムの物語だから容赦無く残酷シーンに巻き込まれたりもする。そのときの彼らの演技も、こっちがスクリーンの中にいるような気になるほど上手である。

この映画を見ると、ブラジルのこのスラムの歴史と、雰囲気がよくわかる。原作者はスラム出身だから、ディテールにこだわりがあるのは当然だが、その「本物」の空気と娯楽性のバランスがよく取れているので、まったく退屈しないのである。

貧民街の物語ではあるが、ときおり抜け出て行く奴もいるし、ただ永遠に繰り返されるだけの暴力もある。だが、ブラジル人の持つ妙な明るさのおかげで、なんとなく救われるというか、見た後もなぜかさわやかな気持ちになる。

ブラジルの、一風変わった映画をみたいという方は、ぜひ足を運んでみてはどうであろう。



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