『デブラ・ウィンガーを探して』70点(100点満点中)

出演女優リストを見てから出かけよう

ショウビズ界有数の俳優一家の長女、ロザンナ・アークエットが初監督したドキュメンタリー。「女優業と母親業の両立に悩む」ロザンナ自身が、主に40代以上のハリウッド女優34名にインタビューしつつ、最後に憧れの女優、デブラ・ウィンガーにたどりつくまでを描く。

ロザンナの親しみやすさのせいか、名だたる女優たちが、彼女の前だと実によくしゃべる。まるでこうした話題を語る場を待っていたかのようである。話題はエスカレートし、男の事やら美容整形の噂などにまで及ぶ事もある。

インタビューの場は、彼女らの私室だったり、食事中だったり、ときにはトイレの中だったりする。セレブたちの普段の表情が覗き見れるようで面白い。カメラは主に手持ちで、時にはピンぼけもあるが、それが逆にいい味になっている。

さすがは世界のハリウッドというべきか、ここで活躍する女優たちは、普通にしゃべっている表情にさえ、こちらを引きこむ魅力に溢れている。また、話している内容自体も、知性を感じさせ、なかなか興味深い。

ウーピー・ゴールドバーグのように、しゃべりそれ自体がエンターテイメントになっているような人もいるし、妹パトリシアとロザンナの絡みも興味深い。また、女優業より育児をとったデブラ・ウィンガーのインタビューなどは圧巻で、安っぽいフェミニズムなどは、彼女の輝きの前に吹っ飛んでしまうと感じるほどだ。

このほか、シャロン・ストーン、ダイアン・レイン、グウィネス・パルトロウ、サルマ・ハエック、メグ・ライアン、ジェーン・フォンダ、その他大勢……と、次々有名女優が登場する。

音は良くないし、次々にカットが切り替わるあわただしさで、もしかしたらビデオでゆっくり見たほうがいいのかもしれないが、劇場用ドキュメンタリーとしては、出色の面白さである。

ただ、条件が1つある。それは、出演女優の少なくとも半分くらいは知っている必要があるという事である。

出来れば、その女優の恋人や旦那さんの遍歴、家族構成(例えば2世俳優と、成り上がり組の意見の違いも面白いのだ)など、よく知っていればなおさら楽しめよう。

ターゲットは30代以上の女性だが、男性が見ても、それなりに楽しめる作品といえる。



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