『ジャンダラ』60点(100点満点中)

先進国の映画には無い驚きがある

1964発表のベストセラーを映像化したタイ映画。タイでは、誰でも知っているくらい有名なお話である。

国民の9割が仏教徒であるタイでは、セックスは長年タブー視されている。この映画の主演女優も、たくさんヌードやエッチシーンがあるから、タイ国内では結局見つけられず、外国人を起用したという経緯がある。タイでは、ヌードシーンを演じたことが社会的にマイナスになるという事らしい。

当然、この手のH描写も本来ご法度で、映画化されたあとも大量の修正を加えられたという。だが、日本で公開されるのは修正前の完全版である。さすがわが国は、世界に名だたるH大国である。政治も外交も3流だが、エロだけは負けないという気概を感じるではないか。

この映画のセックス描写は、結構直接的なものだから、裸もいっぱい出るが、それ自体の過激さ以前に、そのシーンを至近距離で子役が眺めているというところに驚かされた。あの子、トラウマにならなきゃいいけどなぁ。

そのほかにも、障害者をあきらかに忌み嫌う描写があったりなど、欧米先進国の映画ではあまり見られない点があり、面食らう。

本作で描いているのは、「正しい性教育のない悲劇と、それへの警告」である。性情報過剰気味の日本人には不要な話かもしれないが、綺麗な映像と、興味深い謎で引っ張る演出のおかげで退屈はしない。

それにしても、私がこれを試写で見たのは、去年の12月上旬である(6ヶ月も前だ)。公開時期について、ずいぶん迷ったんだろうなあと、配給会社の苦労が窺い知れる作品である。



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