『春の惑い』30点(100点満点中)

テンポがのろい意外性ゼロの3角関係ドラマ

親友同士の男と、一人の奥さんを巡る3角関係恋愛ドラマ(エロ無し)。意外なことにこれは、中国初のリメイク映画だったりする。ハリウッドは見習ってほしい?!

舞台は1946年の中国。ユイウェンの嫁いだ由緒ある旧家は、抗日戦争に巻き込まれて没落してしまう。それでも彼女は、気難しい病気の夫リーイェンとその妹シュウ、使用人ホワンの4人で静かな毎日を送っていた。そんなある日、ひとりの男が訪ねてくる。彼はかつてリーイェンと共に医学を志し、現在は上海で医者になっているチーチェン。夫が旧友との再会を喜ぶ一方、ユイウェンは困惑していた。なんと、チーチェンは彼女が16歳の時の初恋の相手だったのだ。この思いがけぬ再会に、ユイウェンの心は掻き乱されていく。

いわゆる古めかしいメロドラマだが、話の展開速度が相当遅いので、せっかちな人には向かない。映像は美しく、中国映画らしい趣に満ちている。

チーチェンは、夫が病気であることからくる罪悪感のためか、ぐずぐずと優柔不断でなかなか彼女に手を出さない。俗物である私などはさっさとやっちまえよ〜などとバカな事を考えたりするが、この葛藤こそが恋愛の奥深さ。我慢に我慢を重ねてこそ、その結末にカタルシスが生まれるというわけだ。

音楽はほとんどなし。人物は5人、ストーリーは超シンプル。贅肉を殺ぎ落としたドラマが伝えるものは、人類発祥から続いているであろう愛の矛盾。

ごく普通のライトユーザーにはあまりすすめられないが、このゆったりとしたペースについていける人には、ぜひともチャレンジしてみてほしい。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.